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ファルコン再び? [ドラマ版「BM」パロディ小説関連]

友人からのメールで知ったんで、真偽のほどは確かじゃありませんが(いや、友人Sを信じていないわけでは断じてないのですが、自分では確かめてないので、一応言ってみた<死)祝・ブラッディマンデイ2が、1月からOAだそうです!(パチパチ)

といっても、あのラストだと、当然2有りきの内容だったので、まあ、1月期に持ってきましたか。。。位の感じで、驚きではないのですが、めでたいことに変わりはないです。

JINで、タノスケ(って、千両役者の名前をカタカナで書いたら、怒られそうだけど(苦笑))やってた彼も、当然招集でしょうし、たけるんも当然召集。
いわずもがなの、成宮くんは、いつ寝てるんですか?っていうか、いつ役の気持ち切り替えてるんですか?ってくらい、働きすぎですって感じですが、是非、頑張って撮影参加してください(は?)
そして、春馬くん。
ごめんね、お侍さんな小出くんは好きだけど、サムライな春馬くんにはついていけずに(でも、途中までは頑張った。しろたんも出てたし)途中で脱落しちゃった、いけてないファンだけど、ファルコンな春馬くんながら、一秒たりとも見逃さないくらいガン見して、TVの前で正座して待っとくんで、そこんとこよろづや!(局が違う。。)

と、ここで脱線。

JINみてて想ったんですけど、いや、ルーキーズ見たときから想ってたんですけど、今回のルーキーズ映画版DVDみてても想ったんですけど。。。
ひげがなかったら、男前過ぎて、川村くんが、誰だあの男前!ってわからなくなりそうな罠(爆)

さすが、石丸PのJINだから出てても全然不思議じゃないけど、男前過ぎる川村君が普通に男前で、不思議でした(意味不明)

さて話は戻って(急過ぎないか?)

というわけで、無事ブラッディマンデイ2がOAされるということで、成瀬も大概書きかけで放置してたBM小説がまだ1本残ってるんで、2のOAまでには書き上げようかな?とか、その前に書くのは山ほどあるやろって突込みには、両耳を手のひらでたたきながら、あわあわ叫んで聞こえないフリ(待てコラ)

とりあえず、年賀状が無事完成したら(実家用と、姉宅用と、義兄の会社用(自営業)と自分とネット用の5パターン作らないといけない、ある意味自分を自分で追い込んで墓穴掘ってる、ただ働きさされ放題の器用貧乏な成瀬)手をつけようと想ってます!
(遠い目)

そのまえに、自分がおさらいする意味で、横のカテゴリーにもありますが、ブラッディマンデイ二次創作小説の過去作品を一応整理。

つっても、3作品とすくないんで、今のお蔵入りになりかけのとあわせても4作品ですが、まあ、一本づつが長いんで、もしよろしければご覧いただければ幸いです☆

過去に書き散らかしている、ドラマ版「ブラッディ・マンデイ」の二次創作小説の現時点でのラインナップは、

No.1 『一番罪深いのは 【前編】』

No.2 『一番罪深いのは 【後編】』

No.3 『遺したいものは』

の3作品となっております。

「一番罪深いのは」は、音弥視点で、音弥と藤丸くんご出演。
ドラマで言うと、5話のラスト辺りのところで、あったかもしれない時間を妄想(待てコラ)してみました。

「遺したいものは」は、同じく音弥視点で、音弥と加納さんと藤丸くんって感じで、6話でサードアイとJたちとの銃撃戦に巻き込まれた藤丸くんが、サードアイを出て翌朝自宅で目覚めるまでの、あったかもしれない時間を妄想(だから、待て)してみました。

3作目が、「その心に祈るものは」です。
ようやく、藤丸くん視点の、音弥と藤丸くんのお話。
内容的には、「遺したいものは」の続きって感じ?に仕上がっております。
そうそう、この4作目までは、ブラッディマンデイの最終回を見る前にすでに書き上げておいたものだったのですが、しかし、ラストをそんなはずしてなくて、ちょっと一安心です(苦笑)

稚拙な作ですが、ご感想等いただけましたら幸いです。
もし、ご意見、ご感想をお寄せいただけますのでしたら、こちらのフォームから、是非どうぞ☆

では、毎回書いてますが、下記の注意事項から先へおすすみくださいませ☆

☆この記事を読まれる前に、まずはこの5つほど下のエントリにあります、パロディ小説をお読みいただくに当たっての注意書きか、サイドバーにあります注意書きかのいずれかを、必ずお読みいただいてから、それをご了承いただいた上で、お読みいただけますようお願いいたします。

下記小説は、ドラマ好きな、ブラッディマンデイの一ファンである成瀬美穂の、作品を愛するが故の、空想の産物です。
よって、実在する作品、人物等に、一切関係はございません。
上記に関し、警告がきた場合には、即刻当該ページを削除する用意がありますので、実在する作品を害する意図は、一切ないことを、併せて明記させていただきます。


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ブラッディマンデイ二次創作小説 No.4 [ドラマ版「BM」パロディ小説関連]

現在、期間限定で書き散らかしている、ドラマ版「ブラッディ・マンデイ」の二次創作小説の現時点でのラインナップは、

No.1 『一番罪深いのは 【前編】』

No.2 『一番罪深いのは 【後編】』

No.3 『遺したいものは』

の3作品となっております。

「一番罪深いのは」は、音弥視点で、音弥と藤丸くんご出演。
ドラマで言うと、5話のラスト辺りのところで、あったかもしれない時間を妄想(待てコラ)してみました。

「遺したいものは」は、同じく音弥視点で、音弥と加納さんと藤丸くんって感じで、6話でサードアイとJたちとの銃撃戦に巻き込まれた藤丸くんが、サードアイを出て翌朝自宅で目覚めるまでの、あったかもしれない時間を妄想(だから、待て)してみました。

稚拙な作ですが、ご感想等いただけましたら幸いです。
もし、ご意見、ご感想をお寄せいただけますのでしたら、こちらのフォームから、是非どうぞ☆

ちなみに、今回の作は、「その心に祈るものは」です。
ようやく、藤丸くん視点の、音弥と藤丸くんのお話。
内容的には、「遺したいものは」の続きって感じ?に仕上がっております。
そうそう、この4作目までは、ブラッディマンデイの最終回を見る前にすでに書き上げておいたものだったのですが、しかし、ラストをそんなはずしてなくて、ちょっと一安心です(苦笑)

では、毎回書いてますが、下記の注意事項から先へおすすみくださいませ☆

☆この記事を読まれる前に、まずはこの5つほど下のエントリにあります、パロディ小説をお読みいただくに当たっての注意書きか、サイドバーにあります注意書きかのいずれかを、必ずお読みいただいてから、それをご了承いただいた上で、お読みいただけますようお願いいたします。

下記小説は、ドラマ好きな、ブラッディマンデイの一ファンである成瀬美穂の、作品を愛するが故の、空想の産物です。
よって、実在する作品、人物等に、一切関係はございません。
上記に関し、警告がきた場合には、即刻当該ページを削除する用意がありますので、実在する作品を害する意図は、一切ないことを、併せて明記させていただきます。

========注意書きをお読みいただけましたか?
ありがとうございます。
では、どうぞ。。。

スタート。


 

// その心に祈るものは //

 

「アルファベット10番目の『 J 』か…」

 


別段、これといって誰に聞かせる風でもなく。

ただ、なんとなくといった感じで吐かれた音弥の声に。
ベッドに腰掛けたままの状態で、くいっと顔だけを自分の前に立って、今しがたその言葉を落とした音弥に向かってもち上げると。
突如、そこにばふんと、この家の、どこを家捜ししてきたのやら。
自分の家に、果たしてそんなものは最初からあったのかどうか、いささかその出所に疑問符が付きまといそうなほどの、自身の上から包み込むくらいの大きな白いふかふかのタオルを被せられて、がしがしと、乱暴に濡れた髪を拭われてしまい。
まるで、音弥が昔飼っていた犬を夏の庭で水浴びさせていた後、その犬を抱え込むようにしてがしがし濡れそぼる毛並みをタオルでふき取っていたとき同様、そんな音弥の飼犬並の、手荒な扱いしかしてもらえていない自分を。
それでも、そのことに、少し笑いが漏れる程度には、そんないつもと変わらない音弥の自分への態度にほっとさせられて、知らず、詰めいてた息を、ゆっくりと吐き出した。

 

サードアイ本部の会議室で、自分が投げた”なぜ”に、一切の答えを返すことなく、加納に後は頼みますとだけいって、部屋を出て行ってしまった霧島の背中を見送ってから、どれくらいの時間がたったのだろうか?

恐らく、さほど長い時間は、経っていないはずなのだが。
そんな、どれほどの時間が流れたのかすら、考えたくないほど。
足の先から頭のてっぺんまで、ずぶずぶと落ち込んで、抜け出せない泥水にどっぷりつかってしまっているかのごとく。
頭も、身体も、…自分という人間を形作るすべてが、もう、何も考えたくないと訴え続けている錯覚に陥りそうになり、慌てて自分のかぶりを振った。


残された時間は、ごくわずか。
そんなことは、誰に言われなくても、きっと、自分が一番よくわかっている。
あの、ブラッディ-Xの脅威を知る俺自身が。

なのに、自分の婚約者が助かるかもしれない可能性を捨ててまで、任務を優先した霧島の考えは理解できないが、そのことで彼が苦しんでいることは、紛れもない事実だとわかっている以上、二人目のウイルス感染者である早川沙織を助ける方法を、早急に考え出さなければならない。


遥のこと、父のこと。
折原マヤのこと、彼女と同じ志を持つテロリストたちのこと。
サードアイのこと。
…そして今日、俺の目の前に現れて、謎の言葉を残していったJのこと。

考えなければいけないことは、吐いて捨てるほどあるのに。
自分の中の何かが、それを拒否しようとしていることに、ため息が漏れるのを、止められなかった。


理由はわかっている。
自分が護りたいものと、それを脅かす存在が、紙一重な現実に。
音弥に放り込まれるように、傷口にサランラップをぐるぐる巻きにされてから押し込められたシャワーを浴びる前。
これもまた、飲めば睡魔が襲ってくることがわかっていたので、わざと避けていたのに、俺が飲むまでは絶対に視線をはずさない勢いの音弥の無言の圧力に負けて、しぶしぶ痛み止めを飲んだはずなのに。
それでも、宝生小百合に撃たれたところが、知らず、ずきりと痛んだ気がして、…それは、自分の弱さなのだと、思い知らされていていた。


遥には、まだ逢えない。
今の自分では、遥に逢うことは出来ない。


それがわかっているからか、サードアイから城南病院まで、俺を運んでくれた加納が、それまで遥についてくれていた音弥の代わりに、遥の護衛には自分がつくと、…ある意味恐ろしい申し出をした彼は、だから音弥に、俺を自宅へつれて帰れと、顎で指図したが。
そう言われるまでもなく、音弥はそうするつもりだったのか。
まるで、二人は、そのことが暗黙の了解のように、加納と音弥は頷きあっていて。
それに対して。
自分の処遇を勝手に決められているにもかかわらず、そのこのになんの異議もはさめなかった俺は、今の状態で、遥に逢えるわけがないと、自認していたからなんだろう。

ただひとつの心配は。
護衛という意味で、加納という人間ほど、心強い人間はいないのかもしれないが。
しかし、それまでのいきさつを、何も知らない遥が目を覚ましたときに。
眠りにつくまでは、大好きな音弥が傍にいてくれたはずだったのに、目覚めてみたら、音弥も俺もいない状況で。
いきなり自分の目の前にいる人間が、初対面の加納では、遥を怖がらせてしまうのでは?
という、危惧が少なからずあったのだが。

それは、俺が思うよりも、当人が理解していたのか。
今夜は、自分は病室の外で待機しているから。
明日、迎えに来いといって、加納は俺たちを帰らせた。

 

そうやって自宅へ帰された車の中で。
サードアイの人間が運転する車の、後部座席の隣に座って、辛抱強く何も聴いてこなかった音弥は。
けれど、サードアイの人間と別れて、家の中に入るなり、俺を風呂に押し込み、薬を飲ませてと、手を止めることなく世話を焼きつつ、途切れがちに、要領を得ない話し方しか出来ない俺の言葉を、驚くほど器用に、音弥は引き出していた。

まるで、俺のうちにたまっている何かを、吐き出させてくれるかのように。
俺はそれに、少なからず、甘えていた。
だから、言ってみれば国家機密ともいえるそれを、躊躇なく音弥に語ってしまっていた。

言ってから、今更気づいても遅いのだけれども。

 

「Jっていうのは、偽名だけど、…って、あいつはいってた」


閉じた瞼の裏に、そう半笑いの顔で、無邪気な声で俺に言った、Jの姿を思い出しながら、音弥のつぶやきにそう答えていた。
言われた音弥は、両手でわしゃわしゃやってたその動きをぴたっと止めると、真っ白なバスタオルに覆われて、視界を遮られているその間から、俺の顔を掘り返すようにそれをずらして、返事を返してきた。


「それは、普通に、…そらそうだろう。
だって、見るからに日本人、…っていうか、俺らとそうかわんない感じだったんだろ? 」
「年恰好は、…って言う意味でだよ。
でも、持ってる雰囲気が、全然違う。
あんな人間、…そんなにいない。
あの状況を、純粋に、ただ、…楽しんでる。
それだけだった」


頭からすっぽりかぶせられていた生地の端をつまんで、それをはずす作業を進める音弥を手伝うようにそこへ片手を伸ばして、ずるずるとそれを下に引きながら、ぽつぽつと返事を返す俺を、バスタオルの隙間から俺を覗き込むようにしてみていた音弥と、不意に視線がかち合って、俺は慌てて目を伏せた。


不図、悟ってしまった。
自分のしていることの、罪深さに。


そうやって、思わず手を止めた俺の胸のうちをわかっているかのように、引きはがしかけた布地を戻そうとする俺の指先を制した音弥に、返す言葉が、中々見つからなかった。


こんなこと、本当は、伝えたくなかった。

言えば、音弥を今以上の危険に晒すことになる。

Jは、恐らく、それが必要であれば、どんな手段も厭わない。
そういう人間だ。
だから、Jが音弥に手をださない保証なんて、どこにもない。

それがわかっていて、音弥にすがる自分は。
きっと、…酷い人間なんだろう。


霧島に、自分の大切な人を救えるかもしれなかったのに、なぜJとの交渉を断ったのかと詰め寄るよりももっと。
自分は、音弥に対して、酷いことをしている自覚が、間違いなくあった。

それでも、今の自分には、この音弥の手が、必要なのだ。


「楽しんでる、…ねぇ」


払いのけなければならないはずの音弥の手を。
けれど、ぎゅっと目を閉じたまま、バスタオル越しに離せない自分に、まるでそんなバスタオル越しの指先の攻防などどこ吹く風といった具合の口調で、わずかに困ったような苦笑いを含ませて、音弥は答えた。


「確かに、…それは、かなりやばい人間だろうな」
「うん」
「それが、俺らと同い年くらいなんだろ? 」
「向こうがちょっと上って感じなだけ、…かな」
「ふーん。
銃器を装備したサードアイの人間に、自分は丸腰で取り囲まれても。
そんな状況を楽しめる、俺らくらいの年の人間が、テロリストたちのリーダーとは、恐れ入ったね。
目の前に転がってそうな死をも、純粋に楽しめる奴なんて、そうはいないよな」
「そんな人間、……そんなにいて、たまるかよ」


思わず、はき捨てるように言ってしまった俺の言葉を聴いたはずなのに、音弥は唇の端を微妙に持ち上げて、宥めるようにかぶせられていたバスタオルをやんわりとした力で取り去り。
それをサイドテーブルの上に丸めておくと、手持ち無沙汰な様子でベッドに腰掛けていることしか出来ない俺に視線を戻し、あまり困っているとは思えない口調で言った。


「やっかいなことに、なってきたな」


”やっかいなこと”なんて言葉で片付けられるような事態では、最早なくなっているというのに、音弥はたいしたことない雰囲気で、ぼさぼさになった俺の髪の毛を手櫛でささっと整えると、俺の身体越しに手を伸ばして、後ろにあった枕をぽんぽんとたたきつつ、枕元に据えた。
その音弥の行動の意味に、検討がつかなかった俺が、いぶかしげな目で音弥を見上げると、彼は悪戯っぽい目を向けてきて、あっさりとそんな台詞を口にした。


「ま、なんにしろ、藤丸はもう寝ろ」
「は?
なにいってんの? 」

本当に、なんのつもりか、想像も出来ないような、予想外の音弥の言葉に。
声がひっくり返りそうな、素っ頓狂な俺の問いかけにも、動じない音弥は、”なにが? ”と、言いたげな視線を落としてくるだけだったので、俺は矢継ぎ早に言葉を放った。


「音弥は、さっきまでの人の話を聞いてなかったわけ? 」
「聞いてたよ。
テロリストのリーダーJと、そのJとやらの絶対的な崇拝者らしき、わけのわかんないテロリスト集団に、なんでそこに組してるのかいまいちわからない折原マヤの存在。
そして、もっとわからない、そのJとやらが語った、神になる方法。
確かに、新たな感染者も出ていて、その人物が、藤丸がサードアイの本部を出る時点ですでに発症している以上、リミットは刻一刻と迫ってるのは、わかる。
それに、拉致られたままの、敷村教授のことはもちろん。
その敷村教授誘拐の手引きをしたとされている、藤丸の親父さん。
しかも、そのJとやらは言うにことかいて、その親父さんが、自分たちテロリスト側の人間だから、藤丸にも自分たちの側に来いなんて、意味不明な理由で、藤丸をスカウトしに、わざわざ危険を冒してまで出てきたんだろ?
そんなわけわかんないことだらけで、何一つ有効な手立ても浮んできそうにない。
これだけ、謎のオンパレードじゃ、悠長に寝てる場合じゃないかもな? 」


音弥は、そんなことを淡々と語ったけれども。
俺は、思わず噛み付くように、その言葉尻を掴んでいた。
ただ、言われた音弥は、それに反比例するかのように、もっとさらりとした返事を唇に乗せるだけだった。


「だったら! 」
「けど。
たった24時間の間に、ゴム弾といえども、至近距離で拳銃の的にされて、朝田を人質に取られて、結果その張本人に、目の前で自殺された。
あげくに、助けてやった朝田からは思いっきり平手打ち喰らって。
協力してやってたはずのサードアイの連中には、いいように囮にされて。
それを待ってましたとばかりに、テロ側の折原たちにはまんまと拉致られて。
最後は、テロリストとサードアイとの銃撃戦に巻き込まれたんなら、もう、十分だろ? 」


最後は、笑い声まで混じってきそうな音弥の口ぶりに、激昂しかけていた自分の頭が、妙に落ち着かされるような気がして。
そんな不思議な気分を味わいながら、俺は音弥に尋ね返していた。


「なんか、…もしかして、俺のことバカにしてる? 」
「さすがになぁ、ここまできたら笑うしかないだろ? 」
「音弥? 」


笑い事では、決してなかった。
決してなかったけれども、笑っていいつのる音弥に、余裕のない自分を気づかされて、徐々に冷静になっていっている気も、し始めていた。

そんな自分に気づいたことに、音弥も気づいたのか。
急に、唇をきゅっとすぼめると、笑いを収めた音弥は、まっすぐに俺を見て、真剣な表情で、それを語った。


「藤丸。
仮に、お前が一睡もせずに、神経すり減らすほど考えたって、現実はそう簡単にはかわらない」
「けど…」
「そうだな。
けど、ゆっくり寝て起きたら、今日の一日が夢でしたってことにも、絶対なってないだろうってことも、わかる」
「…なら」
「なら、自分に出来ることをするって言いたいんだろ? 」


俺の言葉も否定せず。
けど、一つ一つを、かんで聴かせような音弥の言葉に、逆に俺も抗うことが出来ず。
最後は、こくんと、ひとつ頷き返すことしか、俺は出来なかった。

そんな俺の様子を、満足げに見下ろした音弥は、ゆっくりと俺の両肩を後ろに押すようにして、俺をベッドに寝かしつけた。


「今の藤丸に出来ることは、ガキはガキらしく、大人しく寝ることだ」
「…なんで? 」
「そんな頭で考えたって、出てくる答えなんてたかが知れてる。
どうせ、ろくでもない考えしか、浮ばないだろ? 」
「そんなの、わかんな…」
「わかるよ」


静かな、けれど力のある声音で、”わかるよ”といって、横になった俺の視線を外すことなく、揺るがない瞳でベッドサイドに跪く音弥に、俺はもう、引き返せないところまで、彼を引き込んでしまったことを、強く感じた。

音弥がわかっていることは、きっと、彼が口にしていることだけではない。
決して言葉にはされない、すべてのことを、音弥はきっと、もうわかっている。
それが、如実に感じられて、俺は後悔に唇をかんだ。

本当は、音弥こそ、一番巻き込んではいけない人間だったのだ。
危険を顧みない性格は、彼のほうが、俺の数段上を行くのだから。

言葉を失った俺は、ただ、自分を見ている音弥を見つめ返すことしかできなかった。

 

「俺には、わかる。
だって今、もうすでに、俺をこの事件に巻き込んだってことを、藤丸は後悔してる」


図星だった。
けど、音弥の真実を見通す目に、狂いはないのだから、仕方のないことだった。
だから俺は、あえて嘘を並べることなく、本音を口にした。


「だってそうだろ?
実際、撃たれたのも、殴られたのも、囮にされたのも、拉致られたのも、銃撃戦に巻き込まれたのも、俺だけど、……けど、その全部を、音弥は知ってる。
知ってるってことは、同じだけの危険に、音弥を晒してるってことなんだよ。
同じだけの重さを、音弥にだって、背負わせてるってことなんだよ」
「それが? 」
「えっ? 」


一気にまくし立てた俺に、まるでそれをわかっていたかのように、至極するりと、そんな言葉を口にした音弥に、俺は呆気にとられて、彼を見返した。


「それが、なんなんだよ。
本音を言うと、俺は、お前が傷つくのを見たくない。
だから、テロやサードアイなんかに、普通の高校生の俺たちが関わるのは、ご免被りたい。
けど、俺が知らないところでお前が傷つくのは、もっとゴメンだ。
だから俺は、俺の意思で、ここにいる。
もし今ここに、そのJとやらの差し金で、藤丸を狙うために、その殺人ウイルスが撒かれて、俺も感染したとしても、俺はここにいたことを後悔しない自信がある。
ここにいなくて、俺の知らないところで、藤丸を失ったとしたら。
俺はそのことを、一生後悔する。
俺は、そんな後悔をしたくないから、ここにいるんだ。
それは決して、藤丸、…お前のためじゃない。
後悔したくない自分自身のためなんだ」


それ以外の答えはないと言わんばかりの、理路整然とした音弥の言葉に、俺は、そっと目を閉じた。
閉じた瞼の裏側を、妙に熱く感じた。

今日は、涙腺が緩みっぱなしだ。
そんな自分に、苦笑いが浮びそうになった。


「もういいだろ?
ほら、いい加減、ガキはさっさと寝る時間だ」


口を開けば、とたん、涙が零れ落ちそうで。
何も口に出来ない俺を見かねてか。
まるでなんでもないことのように、さっさと枕を整えて、足元の方で丸まっていた布団をたくしあげた音弥は、ばふんと俺の上にそれをかぶせて、ぽんぽんと、子供にするようにそこを上から軽くたたいて、俺に言った。


「けど、ガキはガキなりに考えてる。
確かに、パソコンの前にすわらせりゃ、俺とお前じゃ出来ることは雲泥の差だよ。
でも、普通にここを使って考えるなら、俺のほうが藤丸より、明らかに数段上だろ? 」


そういって、悪戯っぽい視線を投げて、細い指先で、とんとんと自分のこめかみ辺りをつついた音弥は、首をかしげて、横になったままの状態で、されるがままになっている俺を見ていた。


「嫌味、…それ? 」
「いや、事実だ」
「笑えない」


こみ上げてきそうな涙を無理やり飲み込んで、そう憎まれ口をたたいたのに、音弥は軽くあしらうように、俺に返してきた。


「笑わなくていいから、藤丸は寝ろ。
考えるのは、俺がやっとくから、お前は無理やりでもなんでもいいから、とりあえずちょっとは睡眠とって、もう少し、マシな顔色出来るようになっとけ。
でなきゃ、明日遥ちゃんにあえねぇぞ、その顔色じゃ」
「…………」


反論のしようがない、痛いところをつかれて、口をつぐんだ俺に、余裕の笑みを浮かべた音弥は、ぐいっと、俺の首元までかぶせた上掛けを引き上げた。


「わかったら、ハイ、ちゃんと布団かぶって寝る」
「…母親みてぇ 」
「俺は、藤丸みたいな生意気な子供は、いらないよ。
それに、俺だって藤丸と同じガキだ。
けど、いっただろ?
ガキはガキなりに、考えてるって。
んな不安そうな顔しなくても、藤丸の親父さんが、藤丸や遥ちゃんを裏切ることはないし、明日の朝になったら、日本中がそのJとやらが持ってる殺人ウイルスに感染させられてましたなんてことには、絶対になってないよ」
「なんでそう言い切れる? 」


子供のように問い返した俺に、薄く笑った音弥は、当たり前のことのように言った。


「藤丸の親父さんのことは、俺だって昔からよく知っている。
それに、テロリストのことは、やらないんじゃなくて、まだやれなんだよ、…きっと」
「……? 」
「向こうはまだ、パズルのピースが、足りてないんだろ? 」
「えっ? 」
「大体な、そのJって奴が本気でテロを成功させる気なら、さっさとウイルスをこの東京に撒けば済む話だ。
こんなちんたら、やってないで。
けど、そうしないのなら、そうしないだけの、…できない理由が、必ず、あるはずなんだ。
手っ取り早く、ウイルステロを起こせない、…その理由が」


そんなこと、今の今まで、気づきもしなかったが。
音弥の言うとおりだった。

テロリストたちは、ただの気まぐれに、やらなかったんじゃない。
やれなかったと考えるならば、今までの奇妙な事件の数々も、筋が通っているように思えた。


「そっか…、そうだよな。
今までだって、偽のウイルステロなんか、予行演習代わりにする必要なんて、なかったんだよな? 
ホントに、彼らが絶対的な力を持ているのなら」
「そう。
それに、折原マヤを、わざわざうちの高校に教師としてもぐりこませるなんて、んなまだるっこしいことをした意味は?
そんなわけわかんないことに時間割いて、あげく、藤丸の親父さんを取り込んでみたり、藤丸にテロリスト側に来いなんて、…テロリストたちのリーダーのはずのJが、サードアイの連中がくっついてきている可能性が高い状況で、自ら出てくるような危険を冒してまでやろうとしたことの、本来の目的は?
単にウイルステロをやりたいだけなら、そんなことに、いちいち手間をかける必要なんてないはずだろ?
本当に、この東京を壊滅させるつもりで、ウイルステロを起こすつもりなら、四の五の言わずに、さっさとやればいい。
やってやれないことじゃないんだから」
「言われてみれば…」


そこに疑問の余地を挟まなかった自分の方が、今更ながら不思議に思えてくるほど、音弥の語るそれは、説得力があった。
なぜ、今までそのことを考えなかったのか。

あまりにめまぐるしく起きる出来事に、考える暇さえ持たなかった自分を、反省した。


「あと、無差別にウイルスを撒けば、自分たちにも感染の危機が及ぶというのなら、ウイルスに抵抗する力がないままに、テロを起こそうとするなんて、そんな行き当たりばったりなこと、するか? 」
「しない、…よな? 」
「だろ? 
最悪、コントロール不能の殺人ウイルスで、ひとたび自分の手を離れれば、手の施しようのないものだったとしても。
もし仮に、そのウイルスが自分たちをも冒すかもしれない諸刃の剣なら、それはそれで、ちゃんと使い道もある」
「使い道? 」
「ああ。
ブラッディ-Xが、本当に本来の力を発揮して、何の障害もなく、彼らに未曾有のウイルステロを起こさせることが出来る殺人ウイルスとして、有効なものだとするなら、…それをカードに、この国に対して、なんらかの要求があって、しかるべきじゃないのか?
サードアイに、藤丸のハッキングした、ロシアのクリスマスの虐殺の動画ファイルが渡った時点で、国家はブラッディ-Xの存在を認めざるえないのだから。
テロリスト側は、それを利用して、この国になんらかの交渉を行うのが、一番安全な方法だと思わないか?
要するに、無秩序にウイルスを撒いて、自分たちの身にも危険が及ぶ可能性を排除したいから、さっさとテロを起こさないのだとすれば、逆に、政府や現状この事件に対して動いているサードアイに対して、何らかのアクションをおこしてくるはずだろ?
それをしないということは、むこうにだって、まだ、足りないピースが必ずあるはずなんだ。
だとしたら、こっちにも勝機はある」


端的な言葉で、けれど熱のこもった弁を振るう音弥に、俺はただ、聞き入っていることしか出来なかった。
音弥はもしかしたら、サードアイの分析官ですら、舌を巻くような理論を、容易に展開するのではないだろうか? とすら、思えていた。


「それと、宝生小百合がテロリスト側の人間だったから、サードアイの情報がテロリスト側にもれたり、サードアイの地下ダクトにブラッディ-Xを撒かれて、霧島さんの婚約者である早川沙織が感染したりしたわけだけれど。
よくよく考えてみれば、霧島さんの婚約者である早川沙織が感染者になってしまったのは、偶発的かつ、不幸な事故だ。
もしかしたら、もっと関係のない人間が大勢感染していたかもしれないし、逆に、もっと早くに気づかれて、なんの被害もでなかったかもしれない。
そんな、”かもしれない”…ばっかりの状況で、ブラッディ-Xを、サードアイ本部に撒く必要性が、本当にあったのか。
本当に、サードアイ本部を壊滅させたかったのなら、もっと確実な方法は他にもあったはずだし、そうじゃないとするならば、そこにはもっと他の意図が込められていたと見るほうが、理にかなってる。
そして何より、テロリスト側のスパイだった宝生小百合が死んだ今、あの場で、藤丸を介して、Jが霧島さんに交渉を持ちかけてくることを、なぜ誰も疑問に思わないんだ? 」
「……えっ? 」


話が長くなってきたからか。
俺が横になったままのベッドサイドに、体育すわりをした音弥は、両膝を抱え込むように組んだ手の上に顎を乗せ、首をかしげるようにして、俺とちょうど同じ高さくらいの目線で、確認するように、そう尋ねてきて。
俺は、想定の範囲外のその質問に、目をぱちくりやって、聞き返していた。


「宝生小百合は、サードアイの地下にブラッディ-Xを撒いた。
仮に、その結果、サードアイの課員の誰かが感染していたとしても、宝生小百合がサードアイから逃走したあとに、ウイルスの拡散が起った以上、早川沙織が感染したことを、宝生小百合は知らなかったはずだ。
その時点で、宝生小百合は裏切り者と断定されていたのだから、無線だってきられていたはずだし、そんなサードアイ内部の情報がダダ漏れ状態であることを、指揮官としての立場で、自分の婚約者が目の前でウイルスに感染するのを見せられてもなお、その場に留まって指揮を取り続けた霧島さんが、放置していたとは、到底思えない。
彼は、そんなぬるい人間じゃないはずだから。
ならば、サードアイにもぐるテロリスト側の人間である宝生小百合が死んだ今、Jが、サードアイ側の感染者が早川沙織で、なおかつ彼女が、霧島さんの婚約者であることを知っているのは、おかしいことなんだよ」
「そう、…か。
そうだよな。
何で今まで、…って、それって!? 」


音弥の口をついて、するするとよどみなく出てくる彼の持論は、的外れどころか。
あまりにも的を得ていて、俺はぐうの音もでなかった。
ただ、言われるがままに、振り子人形のように、薄い音弥の唇からこぼれ出てくる言葉に、頷いていることしか出来なくて。

それでも、音弥の考えを租借して、とたん、思い当たったひとつの酷薄な現実に、俺はがばりと起き上がって、彼に詰め寄った。

聞き返す俺の言葉尻が、微妙に震えたことも、その俺の驚嘆した反応も、音弥にとっては、想定の範囲内だったのか。
言われた音弥は、ご名答! と、いわんばかりの、平然とした顔で、俺にその、残酷な現実を告げた。


「そう。
その答えは、宝生小百合のほかにも、サードアイには、テロリスト側の人間が、まだ残っている可能性があるってことだ」
「つまり…」
「信じられる人間は、ごく限られてくる、…ってことだな」


ベッドの上に上半身を起したまま。
ガツンと、後頭部をいきなり殴られたような思いで、俺は片手で瞼を覆った。

その可能性が、ゼロじゃないことくらい、目の前で自分に銃を向けてきた宝生と対峙したときから、わかっていたことだった。

サードアイの命令とはいえ、俺と遥を命がけで護ろうとしてくれていたはずの宝生も。
生物の高校教師として、虫も殺さないような顔で、親切な素振りを見せて近づいてきた折原マヤも。

信じていたはずの人間が、ことごとく、テロリスト側の人間だったのだから。
味方のフリをした裏切り者が、どこに潜んでいるのかわからない以上、誰もを疑ってかかるくらいのことが、必要なのもわかる。

けど、そうかもしれないと、曖昧な猜疑心を心のどこかに潜ませていることと、そうなんだと、疑いの余地もない状態で断定されることとの間には、計り知れないほどの、深い溝があることを、思い知らされた。


俺はきっと。
音弥のその言葉を聞く今の今まで。
その深淵を、わざと見ないようにしていたのだろう。

これ以上誰も傷ついて欲しくない思いと同じくらいの重さで、きっと俺は、これ以上誰も裏切らないで欲しいと、心のどこかで願っていた。
だから無意識のうちにでも、わざと、その可能性を否定してきたのだ。


俺はつめいていた息を吐いて、目元からおろした指先を噛んだ。
愚かな自分を、否が応もなく見せ付けられた気がして、重いため息が漏れた。

俺は馬鹿だ。

そう言いたいのに、もう、言葉一つ吐き出す気力もそがれた気がして、押し黙った。
そんな俺を一べつした音弥は、ふっと笑って、再び俺の身体を倒して、ベッドに沈み込ませた。


「けど、少なくとも加納生馬は、遥ちゃんをちゃんと護ってくれるはずだ。
それは、藤丸にだってわかっていることだろ?
だったら、今は遥ちゃんのことは彼に任せて、お前はちゃんと休め」


宥めるような音弥の声色に、全部わかられている自分を感じて、観念するしかなかった。


「藤丸の出番は、きっと、まだ先だ。
お前が寝ている間だって、サードアイは動いているし、俺もちゃんと考えてるから。
全部、自分ひとりでやろうとするな。
ガキはガキなりに、自分たちにできることをやればいい」


もう一度、がばりと起き上がったことで、めくれ上がってしまっていた上掛けを、手早く俺にかけなおした音弥は、酷く優しい声で、けれど、しっかりとした声音で、その言葉を言った。

そして、そんな音弥の声がつむぎ出される彼の唇の動きだけに目を奪われていた俺に、普段は表情をほとんど崩すことのない彼が、子供のように小さく笑って言った。


「それに。
ガキは総じて、諦めが悪いんだ」


俺は黙って目を閉じ、その動きで、音弥の言葉を肯定して見せた。


音弥の強さが羨ましくもあり、また、その年相応とは思えない、達観した考えを備えなければならなかった彼を想い、…わずかに、哀しい気持ちになった。

音弥はいつだって、俺を支えてくれる。
俺の欲しい言葉をくれる。
けど、そんな音弥を支えているのは、彼が必要としている言葉をかけてやれる人間は、…果たして彼の傍にいるのだろうか?


そんな相手が、たやすく思い浮かばないことに、本日何度目かになる涙が滲みそうになって、自分の枕に、顔を押し当てた。


「じゃ、おやすみ」


ようやく、大人しく寝る気になったのかと、俺のその動きでそう判断したらしい音弥は、音もなく立ち上がり、ベッドの傍から離れようとした。
その空気の動きに気づいて、俺は慌てて、かぶせられた布団の端から手を出して、背を向けようとした音弥の左手首を掴んだ。

音弥に言ったところで、起きてしまった現実は変わらない。
けど、今だからこそ、音弥の言葉が欲しかった。
そのために、俺はここに無理やり戻ろうとしたのだ。
加納を困らせるとわかっていて。
サードアイの仮眠室で、一人で眠ることだけは、どうしても出来なかった。

今夜だけは、どうしても。

その理由を、音弥に聞いて欲しかった。
身勝手なことは、百も承知だったけど。
けど、俺は、音弥の言葉が、必要だった。

 

「待って、音弥」


横になった姿勢で、布団から右手だけを出して、音弥の左手首をぎゅっと掴んだままの俺を、必然的に見下ろす体勢になった音弥は、肩越しに掴まれた自分の左手を見てから、俺を振り返り、困ったように眉根を寄せた。


「だからぁ」
「そうじゃなくて。
霧島さんの、婚約者の人のこと」


話は一通り済んだだろ?
といった顔で、俺を見下ろす音弥に、第二の感染者となってしまった、早川沙織のことを口にすると、彼は、ああ、と口の形だけで音も出さずにそういい、合点のいった顔をして、こちらに向き直ると、至極あっさりと、唇を開いた。


「そっちのことね。
酷いことを言うようだけど、俺は、その霧島さんって人の選択は、間違ってなかったと思うよ。
サードアイの指揮官としてなら。
その選択は、きっと正しい」
「なんで? 」
「死ぬとわかっている人間より、生きている人間を優先し、国家の安全を護ることに力を注ぐ方が、サードアイの指揮官としては、最も正しい判断だろ?
だから、霧島さんは、即座にJの交渉を断った。
指揮官が迷ったら、組織は崩れる。
指揮官というのは、そういうものだ。
それがわかっていたから、霧島さんは、…そのこころうちがどうであろうとも、…一切躊躇することなく、Jの交渉を跳ね除けた。
それが、指揮官としての、自分の果たすべき使命だとわかっていたから」
「でもだからって! 」
「だからといって、交渉を受け入れれば、助かる可能性があったのに。
その可能性を絶って、自分の婚約者を見捨てていいのか? といわれれば、その答えは、NOかもしれない。
人として、…と、いうのであれば。
けど、霧島さんは、自分がサードアイの指揮官であることを、捨てられなかった。
それを捨てたら、霧島さんを自分の伴侶として選んだ、…その、早川沙織て人の想いに、そむくことにもなると思う。
その婚約者は、霧島さんを、国家の安全を護ることを使命としたサードアイの分析官であることを理解したうえで、彼と結婚しようと思ったのだろうから。
だから、霧島さんは、どんな状況であれ、自分がサードアイの指揮官であることを、放棄しなかった。
もし仮に、霧島さんが、あの場でJの交渉を受け入れていたら、組織の根底が覆るだろ?
指揮官の助けたい人間だけを助けて、その結果、それ以外に及ぶであろう被害は、度外視でいいのか?
それじゃあ、ただの独裁だ。
国家の安全を護るはずの組織の指揮官のやっていいことじゃない」

 

音弥の言うことは、一事が万事正しい。
正しいけれど、正しければ、何をしてもいいのだろうか?
正しくなくても、国家なんて目に見えないものより、目の前のひとつの命を護ることを優先することは、許されないのだろうか?

そんな思いに駆られて、俺は唇をきつく噛んだ。
そんな俺を見ていた音弥は、ため息混じりに言った。


「死ぬのがわかっている人間を助けることは、不可能だ。
生きている人間を救うことを考えるのが、サードアイの仕事なんだから、霧島さんたちのしていることは、正しいことなんだよ」
「まだ死ぬと決まったわけじゃない! 」
「未知のウイルスであるブラッディ-Xに感染したんじゃ。
……決まったようなもんだろ?」
「でも、99.9%無理だとわかってても、可能性が0でないなら、最後まであがくのが、人だろ?
奇跡は、待ってても起きてなんかくれない。
奇跡は、自分で掴みに行かないと、絶対につかめない。
無理だってあきらめるのは、いつだってできる。
でもまだ、やれることはあるはずだよ! 」
「だったら、俺たちガキが掴みに行ってやればいいんじゃね? 」


勢いよくしゃべりすぎたからか。
息の上がってしまった俺を、しょうがないといった顔で見ていた音弥は、最後にそんな台詞を、ぽんと、俺に投げてよこした。

俺は、あふれ出しかけていた言葉たちを飲み込んで、音弥の言葉を待った。


「頭の硬い大人たちには、やりたくてもやれないことってのが、あるんだよ。
でも、俺らはまだガキだから、あきらめ悪くても、あがいてても、いいんじゃねーの? 」
「……音弥」
「お前の考えてることくらい、俺にはわかってるっつーの。
藤丸が諦めない限り、俺もまだ、諦めてなんかない。
俺様の頭脳を信じて、ファルコン様の力を存分に発揮したいのなら、とにかく今は、その疲弊しきった身体を休めることが、第一条件だ。
だから、ほら、さっさと寝ろ」


ベッドサイドに腰を落とした音弥は、それを、今更言わせるなといった声で、俺に言った。
そして、ゆったりとした手つきで、上掛けの上から、俺の方をとんとんとたたいた音弥は、ニッと、唇の片方だけを持ち上げて、得意そうな表情で俺を見てから、今度こそ、すっとそこから立ち上がって、俺のデスクに向かって数歩歩き、すとんと、デスクトップパソコンの前に置かれた椅子に、腰掛けて、片手を伸ばし、細い指先でパソコンの電源を入れいてた。
ブンと乾いた音がして、ファンの回りだす音がそれに重なった。

恐らく、音弥は俺の言葉から拾った情報の真偽を確かめるために、パソコンを使うのだろう。
俺とは違う使い方だが、ネットを介してどこかへもぐりこむ俺とは正反対に、ネット上に散らばる情報を彼の頭に取り込んで、音弥はそこに沈んでいるかもしれない真実を、導き出すのだろう。
そのほうが、天才ハッカーファルコンなんて呼ばれている俺より、よっぽど天才だと、俺は思う。

そして、そんな音弥を、俺は、何よりも必要としているのかもしれない。
だから、帰りたいといった。
加納に。

サードアイの会議室で、椅子に座ったままそういったときの俺を、不思議そうな顔で見下ろした加納は、何かを考えるような目つきをして、その次の瞬間、
「わかった」
とだけ答えて、俺を遥の傍についていてもらうために、音弥のいる城南病院まで、それ以上何も聞かずに運んでくれた。

加納はわかっていたのだろう。
きっと俺が今、心底感じているよりもずっと早くに。
俺がここへ帰りたいと言った意味が。

失う痛みを知っている加納には。

 


「音弥」


俺がかけた声に、まだ起きていたのか? といった顔で、じろりとこちらに視線をやった音弥は、それでも、
「ん? 」
といって、俺の言葉を促した。


「やっぱ、いい」
「なんだよ、気持ち悪いだろ? 」
「………」
「言えよ」
「言ったら、余計気持ち悪いと思うけど? 」


枕に顔を半分埋めたまま、横向きで寝ている俺が、ぽつぽつと溢す言葉を聞いていた音弥は、ギッとパソコンのデスクチェアを軋ませて、身体ごとベッドのほうをむいた。


「何だそれ? 」
「いや、いま、自分で言おうとして、気づいた」
「言ったら気持ち悪いって? 」
「…うん」
「だったら、言うな」


相変わらず俺が何かを言うよりも先に、その言葉の先を読んでしまう音弥に促されるように、スラスラと答えさせられている俺の言葉を、それだけで、ぱしっととめてしまった音弥に、俺は苦笑いを浮かべて答えた。


「決めるの早っ! 」
「言ったら気持ち悪いんだろ? だったら、言うな」
「そうだけど…」
「気持ち悪いことは言ってもらわなくていいから。
そんなしょうもないこと言ってないで、大人しく布団かぶって寝ろ」


それだけいった音弥は、その言葉どおり、さっさとパソコンの画面に向き直って、カタカタとキーとたたき始めた。
俺は、そんな音弥の横顔に向かって、もそもそと掛布団を引っ張りあげながら声を掛けた。


「……音弥」
「だから、なに」


俺のかけた声質が、自覚できるほどに、いささか硬かったからか。
今度は、一発で椅子ごと俺のほうを向き直った音弥は、そういった。


「ごめんな」


本当は、そんな言葉ですむようなことでは、すでになくなっていることもわかってるし、そんなことを、こんな体勢でいうこと事態、間違っていることもわかっている。
でも、言わずにはいられない言葉を、ぽろりと溢した俺に、ひとつため息をこぼした音弥は、それに取り合わず、口を開いた。


「それじゃないんだろ? いいたいことは」
「……なんで? 」
「”ごめんな”って言われた位じゃ、誰も気持ち悪いとは思わない。
まあ、だからといって、気分よくもないけどな」
「……ごめん」
「だから、あやまられても気分よくないし。
そもそも、あやまられるようなこと、された覚えないし」
「でもっ! 」


平然と答える音弥に、思わず大きな声が出た。
けど、音弥はそれでも、今更なにをいいだすのやら、…と言いたげな視線で俺を見つめてから、今しがた音弥の名前を呼んだ俺の声と、負けず劣らずの硬質な声で、その薄い唇を動かした。


「さっきもいったけど。
俺が今ここにいるのは、俺の意志であって、藤丸のためじゃない。
俺は、俺のためにしか、動かない。
俺は、そういう人間だから、気にするな」
「じゃあ…」
「じゃあ、なに」


それ以上の抗弁を許さないような、一方的に話を終わらせてしまおうと、…そして、俺を一分でも早く寝かしつけようとしているのが丸わかりな音弥の物言いに。
冷たいように見せておいて、本当は、何よりもやさしさのこめられたそれに、俺が言葉を挟んだら、ようやく音弥は折れてくれたのか、俺が話を続けることを促す言葉をくれた。

俺は、すうっと、肺に多めに空気を含むように、音弥の苦情が出ないよう、横になったままでも、出来る限り、しっかりとした声を出すため、息を吸ってから、音弥に言った。

謝罪の言葉ではなく、感謝の言葉を。

 

「ありがとう」


一音一音を大切に、そういった俺を見ていた音弥は、二、三度、…驚いたように、その大きな瞳を瞬かせてから、唇のはじを軽く持ち上げて、笑って見せた。


「ばーか」


返された台詞の、あまりな音弥らしさに、俺も小さく笑った。
こんなところで、こんな風に、笑っている場合なんかではないこともまた、痛いほどわかってはいたけれども。


「ま、いっか。
じゃ、おやすみ」


それでも、これ以上無駄にじたばたしたところで、どうなるものでもないことを自覚して、俺はそれだけを言うと、ぱふんと、片手で引き上げかけていた布団を頭からすっぽりとかぶり、目を閉じた。

 

安らかな眠りなんて、到底訪れはしないことを知っていて。
けれど、それで音弥が納得してくれるならば、もうそれでいい気がして、俺は無理やり閉じた瞳の奥に浮んでは消えていく、今日一日の出来事と、一晩中向き合う覚悟を決めた。


しんと静まり返った夜の空気をわずかに響かせて、部屋の外では、通りを行く、新聞配達のバイクの音だけが、閉じた窓の隙間から、聞こえていた。
この家に戻ってきてから、もう、時計すら見てはいなかったけれど。
そんなものを見なくても、きっと、夜明けの時間は近い。


それでも、酷く長い夜になりそうな気がして、包まった布団の中で、小さく息を吐き出した。
音弥の、キーボードを打つ音がまだ聞こえてこないことに、彼がまだこちらを向いているだろうことがわかって。
布団のおかげで、顔が見えていなくてよかった、…なんて。
そんなことを今更ながら、頭の隅でまじめに考えている自分に、自嘲気味な笑みが浮びそうになった。

 


「ちょっと待った」


と、唐突に、そんな音弥の声が聞こえた瞬間。

突如、頭からすっぽりと被っていたはずの布団が剥ぎ取られ。
蛍光灯の明かりを背後に背負った音弥が、急に捲られたせいで、まだ明るさに慣れていない目に入ってきた光の眩しさと、逆光での見えずらさも手伝って、はっきりと見えたわけではなかったけれども。
そんな状態でもわかるくらいには、少し怒ったような顔で、剥ぎ取った上掛けを片手に、もう片方の手は、腰にでも当ててそうなくらいの仁王立ちで、俺を見下ろしていた。


「へ? 」


我ながら、なんとも情けない声がでたが、そんなことをかまっている余裕はがなかった俺は、自分を見下ろす音弥を見返した。


「へ? …じゃねぇよ。
で、なんなんだよ」
「………何が? 」
「気持ち悪くてもいいから、言え」


言えといってみたり、言うなといってみたり。
随分とお忙しいことでといえるほど、根性の座ってなかった俺は、すねた子供のように、小さな声で言い返すことしかできなかった。


「さっきと真逆のこといってる」
「それがどうした」
「それがどうしたって…」
「言って藤丸の気が楽になるなら、言え。
俺が、多少気持ち悪い思いするのは、今夜くらいは、我慢してやる」


なんでもお見通しな音弥に、俺は思わず嘆息した。

そして、そういった音弥は、捲った布団をベッドの上に下ろし、すでに聴く体勢に入っていて。
俺が何を言い募ったところで、それを翻すとは思えず。
それを瞬時に悟った俺は、宝生に撃たれた部分を、ばれない程度に庇いながら上半身を起して、音弥の視線に近づき、口を開いた。


「じゃあ、いう」
「ん」
「俺さ、今日、朝田に言われて、初めて気がついた。
俺は多分今まで、自分がいなくなった時のことを、ちゃんと考えたことがなかった」
「…藤丸? 」


さすがにこれは、音弥の予想の範囲外のことだったのか、微妙に戸惑った声が返されたが、俺は誤解のないよう、言葉を付け足した。


「別に、自分が不死身だとか、死ぬわけないとか、…そんな風に思ってたわけじゃないよ。
偽のウイルステロ騒ぎのときとか、宝生さんに撃たれたときとか、…マジで、俺はここで死ぬんだなって、思ったし。
けど、俺の目の前で、俺は何も出来ずに、加納さんが宝生さんに撃たれた時とか、止める間もなく、宝生さんが自分で自分を撃った時に、やっとわかった。
残される側の辛さが」
「…そっか」
「うん。
それで思った。
音弥はすげぇって」
「は? 」


またも、俺が口にした結論が、音弥の想定外のことだったらしく、彼には不似合いな声がもれたが、俺は自分の想いを真摯に伝えるために、言葉を続けた。


「いつだって、俺に行けって、…行っていいって言える音弥は、すごいと思った。
俺が何するかわかってて、それでも行っていいって言えるのは、その結果を全部背負う覚悟があって、言ってるんだってわかったから、…すげぇって、正直ものすごく、そう思った」
「意味わかんね」


音弥と真正面から向き合うために、ベッドの上に足を投げ出したまま座ったまま、無理に腰をねじった姿勢でいることも厭わず、音弥に話し続ける俺に、眉根を寄せて見せた音弥はそういって、そっぽを向こうとした。
本当は、その後に続く俺の言葉を知っているから、わざとそうしたと思える態度に、俺は慌てて、さっきまで布団を掴んでいた音弥の手をとって、こちらを向かせた。


「だって音弥は、なにがあっても、結局最後は、”心配したぞ”っていいながらも、全部黙って、俺を許してくれてた。
本当は、待たされる側の人間は、そんな言葉なんかじゃあらわせられないくらいの気持ちを抱いてるはずなのに、そんなこと、音弥は俺に、一言も言わない。
言わないくせに、俺の欲しい言葉はちゃんとくれる」
「何度も言うけど、藤丸のためじゃない。
俺は、俺の為に言ってるだけだ」
「そうだとしても! 」


俺の言葉を否定してかかる音弥に抗うように、俺は少し大きな声で、彼の言葉を止めた。
音弥は、そんな俺の行動に、すうっと目を細めると、あきらめたように、俺に掴まれていた手首から、力を抜いた。

それがわかった俺は、声の調子を元に戻して、話の続きをした。


「それでも、俺はそれがないと、…駄目なんだってわかった。
どんな状況でも、音弥が普通に、心配したぞとか、無事でよかったとか。
そういう、普通の言葉を普通にかけてくれることが、…俺が俺でいられることだってわかったから。
だから、帰りたいって、…加納さんに、無理言ったんだ。
あのままあそこにいたら、俺は駄目になるって、…なんの根拠もないけど、そう思えて、音弥のとこに帰んなきゃって、無性に思った。
で、戻ってきたら、あんなことがあったのに、やっぱりちゃんと、音弥は普通にオカエリって言ってくれて、すげぇ嬉しかった。
ホント、泣きたいくらい、嬉しかった。
ああ、まだ俺、大丈夫だって、…なんか、そう思った」


そこで言葉を切った俺は、無心に話していたために、自分が握った音弥の手だけを見ていた自分に気づき、ようやく、恐る恐る視線を上げて、音弥の表情を伺った。

音弥は、これといって表情を変えることなく、俺を見ていた。
音弥は、いつだって俺の気持ちを汲んでくれるけれど、相手の負担とならないためにか、どんなときでも、わざと自分を見せないようにしているかのような音弥の気持ちは、その表情だけ俺が読み取ることは、…情けないことに、できそうもなかった。

俺は、掴んだままになっていた音弥の手を離して、その今の今まで音弥の手に触れていた自分の指先を、反対の手で握り締めた。


「ごめん、やっぱ、…そんなこと勝手に思われても、気持ち悪いよな」
「別にいいけど? 」
「えっ? 」


あまりにあっさりと言われたから。
一瞬、なんと言ったのかすら、わからなくなりそうで、俺は弾かれたように俯きかけていた顔を上げて、音弥を見た。


「別に俺は、最初から、なんかあったら、藤丸と遥ちゃんと、…二人まとめて面倒見てもいいくらいの覚悟、あったけど?
藤丸が、遥ちゃん人質に捕られて、駆けずりまわされたり、んなことするわけないのに、藤丸の親父さんが裏切り者扱いされたり。
国のためだかんだか知らないけどさ、自分たちのいいように、利用するだけ利用して、あとは責任取るつもりのないサードアイなんかに、散々振り回されてる藤丸を、…それでもそこに護ってもらうしかないから、藤丸だけ我慢してればそれでいいなんて、俺は全然思ってなかったし。
なんなら、まだ、テロリスト側の人間が潜んでるっぽいサードアイなんかには見切りつけて、んなとろこに護ってもらわなくても、俺ん家に二人して避難してくれば? くらいのこと、真剣に考えてたし」
「……マジで? 」


そんなそら恐ろしいことを、よどみなく口にする音弥を、ぽかんと見ているだけしか出来なかった俺は、怖々そう聞き返していたが、その問いかけに、彼は若干不快そうな表情をして、眉間にしわを寄せた。


「ここ、冗談言うようなとこか? 」
「…違うけど」
「だったら、マジに決まってるだろ? 」
「…………」
「俺の家が、法務大臣の家だってこと、忘れたわけじゃないよな?
あの人の力借りんのはしゃくだけど、今はそんなこと言ってられない非常時だろ?
だったら、俺の家なら、腕利きのSPが24時間体勢で、玄関先に仁王立ちしてるんだ。
テロリストの連中だって、そんなとこには、そう簡単に手だしできねぇよ」
「音弥…」
「やっぱりここは、俺のほうが藤丸より、一枚も二枚も上手だよな」


俺に握られていたはずの手を、頭の横に持ち上げた音弥は、そこで自分の人差し指をぴんとのばし、そこをとんとんと、指先でつついて、ニッと笑って見せた。
俺には、もう何もいえなかった。

そんな俺をわかっているかのように、音弥はさっさと言葉の先を進めた。


「それと、俺は残される側になるつもりは、はなっからないし。
そんなことにもなんないから、安心しろ」
「音弥? 」
「明日の朝起きたときも、俺は普通に”おはよう”って、お前に言ってやるよ。
Jとかいうふざけた名前のテロリストも、この東京のどっかで、それとおんなじ朝を迎えてようが。
すでに発症してしまっている、第二のウイルス感染者がいようが。
藤丸の親父さんですら、裏切り者扱いの、…そんな、誰が味方で誰が敵なんだか、…もう、それすらわかんないような、むちゃくちゃな状況だろうが。
そんなことはどうだっていい。
それでも、俺は普通に藤丸に、笑っておはようって言ってやる。
でなきゃ、俺がここにいる意味ないだろ?
わかったら、もう寝ろ」


最後は、強引に話を終わらせると、音弥は三度俺をベッドに寝かしつけて、自分が捲り上げた布団を、元の位置に戻し、頬を緩めていった。


「また明日な。
おやすみ」


”また明日な”
当たり前のように、そう言える音弥に、俺は泣きそうになりながら、一言だけ返すのが、そのときの俺の精一杯だった。
その、たった5文字の言葉に、祈るような気持ちを込めて、俺は言った。

 

「またあした」

 

 

 

『おはよう』
『こんにちわ』
『おやすみ』
『ありがとう』


俺は、そんな、普通の言葉を、普通じゃない状況でも、普通に言える音弥の強さに、自分が護られているような気がして、ならなかった。

 

今眠って、明日の朝起きたら、事態が劇的に好転していることは、まず間違いなく、ないだろうけれど。

それでも、朝はやってくるし、きっと音弥は、彼の言葉どおり、それがなんでもないことのように、いつもと同じ調子で、俺に『おはよう』と、言ってくれるのだろう。

 

そしたら俺は、今日という日に、昨日という名前をつけて、ちゃんと、自分の胸の奥にしまうことが、出来るような気がしていた。

時にはそれが、不意に痛み出すこともあるかもしれないし、その痛みを忘れてはいけないとも思う。

 

でもきっと、音弥が、ここまできたら笑うしかないだろうとまでいった今日という日を、自分は乗り越えられる。
音弥が、明日の朝、ただ、笑って『おはよう』と、言ってくれるのならば。


この自分の心が、正しいと思えることを。
例え何があろうとも、辞めずにいられるはずだと、心底思う。

 

その心に祈るものは…。

 

だから思う。
沢山の、普通の挨拶を、普通にくれる音弥に。
最後の挨拶の言葉を…。
『さよなら』を、言う日だけは、少しでも先の、明日であるようにと。

 

別れの挨拶は、『また明日』
それで終われる今日を、俺は願う。

 


その心に祈るものは、…今はまだ、明日という名の、そんな一日。

 

 

++++++++ END +++++++++

 

あいかわらず誤字満載ですみませんでした(とほん)
とりあえず、気づいた誤字脱字は直しましたが、たぶんまだ沢山あると思います。
そのうち直します(ヲイ)


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ブラッディマンデイ 二次創作小説No.3 [ドラマ版「BM」パロディ小説関連]

☆この記事を読まれる前に、まずはこの5つほど下のエントリにあります、パロディ小説をお読みいただくに当たっての注意書きか、サイドバーにあります注意書きかのいずれかを、必ずお読みいただいてから、それをご了承いただいた上で、お読みいただけますようお願いいたします。

下記小説は、ドラマ好きな、ブラッディマンデイの一ファンである成瀬美穂の、作品を愛するが故の、空想の産物です。
よって、実在する作品、人物等に、一切関係はございません。
上記に関し、警告がきた場合には、即刻当該ページを削除する用意がありますので、実在する作品を害する意図は、一切ないことを、併せて明記させていただきます。

========注意書きをお読みいただけましたか?
ありがとうございます。
では、どうぞ。。。

スタート。


 

// 遺したいものは //

 

『九条音弥。
後は、お前に任せた』
『は? 』

 

所謂、丑三つ時ってやつを、大幅に超えた時間に。
それこそ幽霊のような様相で、遥の病室に現れた藤丸は。
その片方の肘を、ぐいっと持ち上げられるように、力強い手で掴んでいる加納がいなければ、そのままバタンと、その場に倒れてしまいかねないほど、憔悴しきった表情で、ドアのそばに立っており。

泣き腫らした目をこすりつつ、ようやく眠りについた遥の傍にすえた、パイプいすに座っていた俺は、自分の目に飛び込んできた、その藤丸の姿に。
ある程度の覚悟はしていたものの。

たった数時間前、あれほど力強い目をして、危険に飛び込むことを承知で、走り去っていった人間と、同じ人間のそれとは思えないほどの変化に驚きを隠せなかった俺は。
それを蹴倒さないのが奇跡だったとしか言いようのないほどの勢いで、パイプいすから立ち上がり。
周りの空気の変化に敏感な遥を起こさないよう。
慌てて、加納にひきづられるようにして、なんとか立っている藤丸と加納を、病室の外へ押し出し。
病室から少し離れた廊下で、この数時間の間に起った出来ごとを、唇をかんで俯いたままの藤丸をあきらめて、まともに話が出来そうな相手である加納から、掻い摘んで聞いた。


厳密に言うならば。
約束どおり、藤丸は無事、帰ってきた。

どこも大きな怪我をしていないし、五体満足、…というには、多少憚られるが、身体的ダメージだけを考えるならば。
行く前と、行った後とでは、さほど差はないと言えた。

けれど、加納の語った現実は。
藤丸の内側を、酷く傷つけた出来事だったと、話を聞くまでもなくわかるくらいに。

たとえそれが、希望の薄い状況であったとしても。
それでも、ずっと顔を上げて、前を向いていた藤丸を。
それがもう出来ないほど、俺が病院の待合室で、その背中を見送ったあとの、このたった数時間が、藤丸を奈落のそこに突き落とすくらいの威力が、十分にある時間だったことを、その彼の姿が、何よりも雄弁に、物語っていた。


明らかに、あくまで一般人である俺に対して、サードアイの人間として、口にしていい事実だけを、でるだけ簡潔に話し終えた加納は。
彼らしからぬ表情で、俺を見ていた。

その時間は、恐らく、わずか数十秒。

けど、たったそれだけの沈黙で。
それでも俺は、藤丸だけではなく。
Jと名乗った人間たちとの邂逅が、藤丸にも、サードアイの人間にも、等しく衝撃を与えた時間であったことを、違うことなく理解した。

テロリストたちが目論む、ウイルステロは、遠くない未来、現実のものとなる。

それを、改めて思い知らされた、時間だったと、実感した。

そしてもうひとつ。
そんな藤丸と加納を前に。
そのことに、あまり驚いていない自分に、俺はわずかばかり戦慄した。

きっと俺は、実際に、テロリストたちとサードアイとの銃撃戦に巻き込まれた藤丸や、テロリストの一人を射殺した加納たちよりも、この禍々しい現実を、誰よりも当たり前のように、受け止めていたのかもしれない。
それはつまり。
俺のうちには、テロリストたちのやろうとしていることに嫌悪する気持ちよりも、この国は、そういう人間達を生んでもおかしくないところだ、…という想いを、確実に孕んでいるという実感を、再認識させられていた。

どちらかといえば、テロリスト側に近い考えを持つ人間。
そんな、俺のような人間が、この世界には、増えているような気がしていた。
だからこそ、そのJと名乗るテロリストのリーダーとやらを、崇めるように護ろうとするテロリストたちが存在していて、そのJが、絵空事のテロリスト然としておらず、俺たちとそう変わらない、どこにでもいそうな普通の青年の姿をしていたのだろう。


藤丸の存在がなければ。
テロリストと紙一重の存在でもおかしくはない自分を感じ、俺はゆっくり目を閉じた。
そのことをわかってさえいれば。
まだ、自分は間違えずにいられるはずだと、…自分を言い聞かせて。


ふっと、閉じていた目を開いた瞬間。
加納の隣で、彼に引っ張りあげられる格好で俯いていた藤丸が、ゆらりと、地面に吸い寄せられるように、膝が折れそうになったことに気づいた俺は、慌てて加納に持ち上げられている腕の反対側を掴んで、藤丸の上体を起こした。

そこで初めて、俺の存在に気づいたような顔をした藤丸は、なんともいえない目をして俺を見、それから、なにかを言おうと口を開きかけたが。
それを遮って、病院の廊下に備え付けられている長いすに、藤丸を連れて行き、そこへ座らせた。
そうしなければ、すでに力尽きてくず折れそうなほど、酷い顔色だった。

無言でそこへ座らせた俺は、大人しく従っていた藤丸に、
「ちょっと待ってろ」
とだけ、そんな一言を残し。
自分の隣で、頷いたんだか、項垂れたんだか、微妙な反応しか返せない藤丸を見下ろしていた加納だけを、先ほどの位置まで連れ戻し、俺は十分に肩で息を吸ってから、おもむろに口を開いた。

 

「なんで、あんな状態で、ここへ連れてきたんですか?
どうみても、まともに動けるような状態じゃないでしょ、あれは」


一回り以上自分より年上の人間に対して、あからさまに責めるような口調で言った俺に、本来の加納生馬という人間なら、言い訳の言葉を吐くよりも先に、目上の者に対して非礼な態度をとる輩相手に、有無を言わさず、拳のひとつでも飛んできそうなことではあったが。
しかし今夜ばかりは、そうする気は一切なかったと見えて。
軽く肩だけを落とすと、長いすに座ったままの姿勢で、肘を膝頭につけて、両手で何とか支えていますといった様子で、前のめりになりながら、両手で顔を覆って、病院特有の、消毒薬のにおいが染み付いたリノリウムの床を、俯けた視線の先に見るともなしに見ている藤丸に、ちらっと視線をやってから、答えを返してきた。


「とりあえず、帰りたいっていったんだ、…あのガキが」
「……は? 」
「帰らなきゃって」

要領を得ない加納の物言いに、俺はその先に続く言葉を気づいていながら、気づきたくない気持ちが先走って、不遜極まりない態度とわかりつつも、苛立ちを隠せずに舌打ちをしてから、言葉を返した。

「いつからです? 」
「なにが」

今度こそ、殴られてもおかしくはない態度をとっているはずの俺に。
それでも、辛抱強くその拳を振り上げずに答える加納は。
しかし、その短い言葉に、わずかばかりの怒りを含んでいることに気づいたが。
そのことを、鼻で笑いそうになる自分を抑えて。
さすがにそこまですれば、病院内で、俺自身が医者のお世話になりかねないことを察して、なるたけ抑えた声で、話を続けた。

「いつからそんな組織になったんですか? 」
「何が言いたい」
「本人が帰りたいっていったからといって、簡単に帰すような組織でしたか? サードアイは? 」

俺の唇から、抑揚なく吐き出されていく言葉を聞いていた加納は、疲れたように一瞬だけ目を閉じ、背後の壁にもたれかかって、両腕を組んでから俺を見下ろした。

「厭味はいい、…時間の無駄だから」
「厭味じゃなくて、事実を言ったまでです」

自分より頭ひとつ分も背の高い強面の加納に見下ろされ。
端的な言葉で返される俺は、ともすれば、それにしり込みしていてもおかしくはない雰囲気が、加納には十二分にあった。
けれど、臆せず返す俺に、苦笑した加納は、顎をしゃくるようにして藤丸を見、それから俺に視線を戻すと、俺の答えなど求めていないかのように、淡々と話の続きをした。

「この際、どちらでもいいよ。
なんにせよ、あのガキが言うんだよ。
今にもひっくり返りそうなほど、青白い顔して。
それでも、…帰りたいって。
今まで見せたこともないような、妙に、切実な顔をしてみせて。
そう、約束したからってな。
だから、帰らないといけないっつったんだよ。
あ、…あと、最後に。
付け足すように、…遥も心配だからとも、言ってたけどな」
「…藤丸が、そういったんですか? 」
「ああ」

まるで、そのときの藤丸の姿を思い出しているかのように、少し遠い目をして加納は言った。
俺は、こぼれそうになるため息を、どうにか飲み込んで、加納の話の続きを目で促した。

「そんな顔で、妹に逢いに行ったところで、お前が心配されんのがオチだろう? って思ったから、本人にそういってやろうかと思ったんだけどな」
「だったら、そうしておいてくださいよ。
あんな状態で連れ回す方が、どうかしています。
サードアイの本部にだって、使われてない仮眠室くらい、腐るほどあるでしょ? 」

当たり前だ! と、いいたくなるようなことを平気で話す加納に、怒るのを通り越して、半ばあきれ返った声で返す俺に、唇の端を歪めた加納は、思い出したかのように、そういった。
その横顔が、加納が笑っていたのだと気づくのに、随分と時間がかかるほど、彼の笑い顔は、それとはわかりづらいものであった。

「今は、暢気に寝てられるほど、暇じゃねぇから、…確かに、開店休業状態の仮眠室は、いくらでもあるな」
「だったらっ! 」

加納の笑顔ともつかないその表情に。
この非常時でさえ、子供相手と思われているのか。
いやになるくらい、のらりくらりと返されてる現状に、幾分、イライラした思いを滲ませて言った言葉を、加納はあっさりと、否定した。

「けど、うちの仮眠室で必要最低限の睡眠をとらせたくらいで、浮上しねぇだろ? あれは」
「はっ? 」


俺は、人の話の先を読むのは、結構得意な方だと自負していた。
例えその相手が、大人であろうと、子供であろうと。
けれど、今ばかりは、そんな自分の能力がまったく当てにならない話の展開に、自然眉間にしわが寄るのを避けられずに、明らかに不機嫌な声を曝す結果になってしまった状況に、再度舌打ちをしそうになった。
ただし、今度は、自分自身に対して、…だ。

そんな俺の心中をしってか、知らずか。
加納は、組んだ腕をそのままに、壁に両肩だけもたれかかった姿勢で、視線だけを俺に投げてきて、確認するような口調で言った。


「お前、九条音弥っていうんだろ? 」
「…それがなにか? 」
「お前は、九条法務大臣の孫。
つまり、おぼっちゃんだろ? 」
「だったら? 」
「…なのに、なんでそんなんが、あのガキとつるんでんだよ」
「悪いですか? 」

自分の態度が、まるで仮面をはがされていくように、徐々に子供じみてきている自覚はあったが、もう、そんな虚勢を張っていられない自分を認めて。
普段は人に見せることはほとんどない感情を晒して、加納をじろりとねめつけた。
どうせ、冷静なフリをしたって、…この男は見抜いている。
ならば、もう隠す必要はないと踏んで、俺は息を吐いた。

「いや、素朴な疑問。
……見たんだろ、例の動画ファイル
「クリスマスの虐殺? 」
「そう。
あんなのを見せられたら、普通、びびるだろうが。
いくら友達だろうと、さっさと逃げ出すのが、普通だろ?
けど、お前はそうしなかった」
「それと、俺が法務大臣の孫ってことには、なんの関係もないと思いますけど? 」

藤丸がハッキングして手に入れた『クリスマスの虐殺』
あれは、単なる動画ファイルでも、絵空事でもない。
実際に起こった出来事で、言ってみれば国家機密の部類に入るものだ。

それを、藤丸が、そんな簡単に俺に見せてしまったことを咎めるでもなく。
ただ、それを当たり前のように確信を持って聞いてくる加納に、彼が何を考えているのか、俺にはまったく読めなかった。

だから、警戒心をこめた目で、上目使いに加納を見ている、そんな俺に、彼は大仰に、組んでいた手を広げて見せて、言葉を続けた。

「大有りだよ。
お前がやってるのは、そこらへんの頭の足りてないバカな高校生が、身の程知らずに、ただの興味本位で首突っ込んでるきてるのとは、わけが違う。
あのファイルの示す重要性と、それを知った人間が負うであろう危険性を理解したうえで、高木藤丸にかかわっている。
なんで、現職大臣の孫なんて立場のおぼっちゃんが、そんな好き好んで危ない橋渡ろうとするんだ?
しないだろ? 普通」
「さっきから聞いていたら、あなたの”普通”の定義を、俺に押し付けないでください。
大体、俺は他人から勝手に、おぼっちゃんなんて、呼ばれる覚えありませんから」

不機嫌を顕にした俺に、それを待っていたとばかりに、凭れていた壁から身体を起こして、俺に一歩詰め寄ってきた加納に、自分が誘導尋問に引っかかったと気づき。
本日三度目となる舌打ちをしかけて、唇をかんだ。

「お前、自分が法務大臣の孫って立場と、高木藤丸の友人って立場と、どっちかをとれって言われたら、迷いなく、あのガキの方をとるだろ? 」

NOの返事など、最初から考えてもいないその加納の物言いに。
彼主導の話展開を、最早、諦めの境地になって受け入れている俺は、これといって否定の言葉を吐くこともなく、答えを返した。

「それがなにか? 」
「なぁ。
…あのガキには、一体何があるんだ? 」

そっぽを向いて答えた俺に、詰め寄った距離だけでは足りなかったかのように、上半身を前に倒すようにして、俺を覗き込んで声を落とし、そう尋ねてくる加納に、ようやく合点がいった。

彼が聴きたかったのは、それだったのだと。

加納は、データより、ある意味自分の勘を信じる男だ。
だから、サードアイ本部のデータが、ある程度、ハッカーとしての高木藤丸を評価していても、所詮、ただの高校生に過ぎないというスタンスを変えなかった。
それは加納が、藤丸と実際に接していなかったときの話だ。

けれど、偽のウイルス騒ぎにしろ、その後に続く事件にしろ。
大げさではなく、共に死線を越えてきたその相手に。
加納の勘が、訴えるのだろう。
高木藤丸は、ただの高校生ではないと。

けれど、その根本がなんなのかが、彼にはわからない。
サードアイ本部の人間達よりは、一番藤丸のことをわかっているのかもしれないが。
それでも、彼にはわからないのだろう。

当たり前のことだった。

こんな国を護ろうと。
そう思ってサードアイなんかに属せる人間に、藤丸にこだわろうとする人間の気持ちが、わかるわけがない。
この国の未来に、希望を見出せている加納に。

だから俺は、わずかに上がる唇の端を隠すように俯いて、尋ね返した。


「聞いてどうするんです? 」
「だから、素朴な疑問だって言ってるだろ。
お前にしろ、あのJと名乗ったテロリストのガキにしろ。
どうして揃いも揃って、高木藤丸にかかわろうとするんだ? 
確かに、ハッカーとしての能力は、他に類を見ないかもしれない。
けれど、それだけであのガキに固執する意味が、俺には見えてこない」
「言ったところで、あなたたちには、一生わかりませんよ」
「いうねぇ、ガキのクセに」
「ガキはガキなりに考えてるんです。
バカな大人どもに振り回されてるだけじゃないってことを、いい加減理解しないと、そのうち痛い目みますよ」
「…もう見たよ」
「そうですね…」

核心を話す気など、まったく見せようともしない俺に。
それでも、この短気そうな気性の男のどこに、そんな相反する気性があったのかが甚だ疑問だったが。
言葉尻はあくまで軽く、根気強く俺の相手をする加納は、最後の俺の台詞に、わずかに視線を落とすと、長い指先で眉間を押さえるようにして、力ない返事を付け足した。
そんな彼に、俺も思わず、言いすぎた自分を反省して。
その、Jとやらの人物像を瞼の裏に描いてから、肯定の返事を返した。


実際、必死なのだ。
この加納という男も。
それがわかって、俺は口をつぐんだ。


「なあ、高木藤丸、…もしくは、ファルコンには、何があるんだ? 」
「そんなに知りたいですか? 」
「知りたいねぇ」
「知ってもわからないと思いますけど。
そうであることの、本当の意味が」
「それは俺が決めることだ」

そうやって、加納は決めてきたのだろう。
自分の生き様を。
そういう人間は、…信じてもいいと、俺の中の何かがそう言っていて。
俺は、胸の中に溜め込んでいた息を吐き出して、ベンチに座ったまま、微動だにしない藤丸を視界の端で確認してから、唇を開いた。


「なるほど。
ならいいます。
……けど、笑ったら、二度とサードアイには、藤丸を近づけませんから」
「出来るものならな」

軽く肩で笑った加納を見上げて、俺は釘を刺すように言った。

「出来ますよ。
さっき加納さんが、自分で言ったんじゃないですか。
俺は、法務大臣の孫ですから、…それくらいのこと、その気になれば、簡単にやってのけます」
「お前は、じいさんの名前をかさに着るようなタイプじゃねぇだろ?
そんな奴が、じいさんの力を、安易に使うのかよ」

見下ろす加納の視線は、やらないだろう? それは。
といっていて。
けれど自分は、彼が思う以上に、したたかな人間であることを伝えるために、唇の端で笑って、答えた。

「使いますよ、俺は。
俺はあの人が嫌いですけど、使えるものなら、何でも使います。
使えるんですよ、俺は。
それが必要であれば、…なんでも」

俺の言葉に、少しだけ目を細めて、神妙な顔つきをした加納は、質問を繰り返した。

「それが、自分にとっては、不本意なことでも? 」
「俺は、誇りを護るために生きてるわけじゃないですから」
「じゃぁ、何を護るために生きてるんだよ」
「自分が生きている意味を、護るために」
「…ご立派」

即答だった俺の答えに、本気とも冗談ともつかない顔で俺を見下ろしていた加納は、それだけを言って、俺の言葉の続きを待っていた。
それがわかっていた俺は、加納の求める答えを、口にした。


「藤丸は、…希望、なんですよ」
「希望? 」
「口に出したら、なんとも陳腐な言葉ですけどね」

半信半疑な加納の問いかけに、自嘲気味になる声を抑えきれずに、俺は答えた。

「でもね、希望がないと、人は生きていけないんです」

そう、藤丸はきっと、希望となりえる力を持っている。

Jには、この国を滅ぼす力がある、けどその使い方を間違えている。
サードアイには、使い方を間違えない人間がいるけれど、力が足りない。

けど藤丸は、力を持っていて、…その使い道を間違えない心も、同時に持っている。
そんな稀有な存在を、失いたくないのは、俺だけではないはずだった。

「たとえ、この国は、一度滅びなければならないと思う人間にも、…実際そうなるために動いて、その滅ぼす方法を考える人間にだって、それが必要なんです。
なぜなら。
絶望を引き起こすには、その先の希望は、必要不可欠。
その先に希望があると、見せかけることさえ出来れば、…本気で絶望を望む人間を集めることは、存外、簡単なことです。
だから、Jとやらは、藤丸を欲しがった」
「Jが、高木を欲しがる? 」
「そうです。
Jは、藤丸の力を、サードアイの人間以上に評価している。
だから、どんな危機的状況に陥っても、最終的に、いつも藤丸は危険を脱して、死を回避してきた。
それは、”運がよかった”なんて言葉で、単純に片付けられるものなんかじゃない。だとしたら、Jが藤丸を本気で殺す気なんて、最初からなかったってことですよね?
そのことを、霧島さんは今までの経緯と藤丸のもつ力を知っていて、薄々気づいていた。
だから、あえて、民間人の一高校生である藤丸を、囮にすることが出来た」
「霧島のことを、…なんで知ってる? 」
「もちろん、俺は霧島さんには、逢ったことがありません。
けど、藤丸から聞いて、知っています」
「それだけで? 」

目をしばたかせて聞き返す加納に、手品の種を明かすかのごとく、俺は言葉を続けた。

「わかりますよ、あなたたちの考えることくらい。
沖田さんが殺されて、藤丸の父親、…すなわち竜之介さんが、テロリスト側についている状況で、霧島さんがあなたたちの指揮官になるのは、順当なことです。
いくら年若い霧島さんでも、今のサードアイに、彼以上の指揮官はいない。
そして、自分たちが認めた指揮官の指示でなければ、あなたたちは動いたりしない。
そういう組織ですよね? 
だから、彼の考えた、藤丸を囮にする作戦に、サードアイの課員全員が加担した」
「今回の作戦の結果は、霧島一人の責任じゃない」

躊躇なく霧島を庇う台詞が吐ける加納に、俺は好感を抱いていたといえば、いささか失礼なことかもしれないが。
唇の端が上がるのを、俺は止められなかった。
ただ、そんな俺の態度よりも、わずかに声が大きくなったそれに、自分でも気づいたのか、加納はちらりと廊下の向こうで座り込んでいる藤丸に視線をやったが、顔を上げようとすらしない姿に、ほっとしたような、心配そうな、複雑な表情を浮かべてから、俺に視線を戻してきた。
俺は、それを待って、話の続きをした。

「わかっていますよ、それも。
だから言っているじゃないですか。
そもそも霧島さんは、藤丸を犠牲にするつもりで、囮に使ったんじゃないんですよね?
霧島さんは、自分の婚約者を殺人ウイルスに感染させられたことで、冷静な判断を欠いて、無謀な作戦を強行したわけではない。
恐らくテロリスト側は、今の段階で、高木藤丸を殺さない。
彼の中では、そんな冷静な計算がちゃんと出来ていて、その上で、サードアイ側の人間の中で、恐らく誰よりもテロリストたちに近づきやすく、かつ、安易に消される可能性の一番低い人間である藤丸を、囮にしたにすぎない。
……違いますか? 」
「お前、一体…」

幾ばくかの畏怖を持って、俺を見下ろす加納の視線に、小さく息を吐いてから、俺は話の先を急いだ。
あんな状態の藤丸を、それほど長い間、放置していたくはなかったから。


「俺は、あなたのおっしゃるとおり、なんの力もない高校生のクセに、無駄に首突っ込んでくる、ただのクソガキですよ。
けどね加納さん。
俺には、…あなたより、たった一つ、確実にわかっていることがあります」
「なんだよ、それは」
「高木藤丸って人間を、…もしかしたら、藤丸本人より、よく知っています。
彼がどんな人間で、何を思い、何を感じ、…そして、何をなそうとしているのか。
俺は、それを知っています。
知っているから、俺はここにいるんです」

なんの迷いもなくそういいきった俺に、思案顔で見ていた加納は、数秒の沈黙の後、確認するように、言った。
彼の口をついて出てくるにしては、なんだか、不似合いな言葉だったけれど。


「希望の傍に? 」
「そうですね。
少なくとも俺は、あなたたちサードアイの人間や、藤丸よりも、ずっと、…彼らテロリストのことも、わかる気がします。
この国が一度は滅びることを、本気で願う人間の気持ちや、それを植えつけることの出来た、そのテロリストのリーダーのJとやらの気持ちを。
そして、そんなJに心酔する彼らの気持ちも。
それは恐らく、俺が藤丸に抱く気持ちに、近いんだと思います」
「だから、ガキが中心になって、テロリストになってるっつーのか?
この国に嫌気の差した、ガキどもが、子供の無邪気さで、人殺しやってるとでもいいたいのか? 」
「そうかもしれません。
ある意味、純粋な想いを持った人間が、間違った方向にそれを注いだ結果が、今の事件の根底にあると、俺は思っています」

話の飲み込みの早い人間は好きだが。
加納は、あけすけな言葉でそれを言った。
けど、そのことを否定する言葉を持たない俺は、そうだと答えるしかなかった。

この国に嫌気がさしている。
そんな気持ちを、俺が抱いていることを、見透かしている加納は、それを肯定も否定もせずに、話の先を促した。

だから俺も、余計な言葉を挟まずに、彼の欲する答えを、唇に乗せた。


「そこに存在する、高木藤丸の意味は?
彼が狙われる、本当の理由は? 」
「藤丸は、希望ですが、…希望が今あってはいけないんです」
「どういう意味だ? 」
「絶望の先に希望があるから、絶望を引き起こすために、ウイルステロを起こそうとすることが出来るんです。
けど、今ここに、すでに希望があるのなら、決して絶望は訪れない。
逆説的なことを言っているのかもしれませんが、希望を失うことは出来ないけれど、そこに希望があるかぎり、絶望は起こりえないんです。
絶望が訪れなければ、この国が一度滅ぶ、…その最後の瞬間は、いつまでたってもやってこないんですよ。
それでは、彼らのしようとしていることが完遂しない。
その矛盾が、藤丸の存在を危ぶませているんです」
「高木藤丸は必要だが、それは、今ではないと? 」
「ええ。
いっそ、テロリストたちがやりたいことをし終えるまで、藤丸は、大人しく冷凍保存くらいされててくれたほうが、そのJとやらは、気が楽かもしれませんね」
「突拍子もない意見だな」
「けど、あなたたちの考えるそれより、よっぽど、真実に近いと思いますよ?
これは、俺たちとそう年の変わらない、バカなガキが起こそうとしてる、場当たり的な行動でも、Jと名乗るたった一人の人間が孕む狂気の行為でもなんでもない。
彼らは本気で、この国を一度滅ぼそうとしている。
それを、そんな単純なものだと考えていたとしたら、宝生小百合の言ったとおり、あなたたちにこのテロを止めることは出来ないと思います」
「言ってくれるじゃないか」

俺の言葉に、再度腕組して、身体を起こした加納は、口の端を持ち上げて、視界の下で自分を見ている俺を、まっすぐに見ていた。
俺は、言うべきことを最後まで伝えるために、その目を見返して、その言葉を言った。

「俺は、本当のことを言うと、この国が一度滅びようがどうしようが、…どちらでもかまわないんです」
「…なに? 」

弾かれたように、組んでいた腕を放した加納を見、藤丸の座っているベンチとは逆方向の、遥の眠る病室の方へ視線をやってから、最後にベンチの上で、どうにかこうにか身体を支えている藤丸を見て、わざと冷淡な声で、その続きを話した。

「ものごとは、なるようにしか、なりませんから」
「本気か? 」
「別に、こんな考えを持った人間が珍しいとは、俺は思いませんよ。
本気でこの国の未来を憂いている人間なんて、そうそういません。
ただ、自分の半径100メートル以内の世界だけが安全なら、それでいい。
……人間って言うのは、そういうものです」
「随分と辛辣な意見だな」

俺を見ていた加納の目が、少しだけ、不憫なものを見るようなそれになっていたことに。

藤丸からは、加納のプライベートに関することは何一つ聞いてはいなかったけれど。
けどこの人は、もしかしたら人の親なのかもしれないと、漠然と思っていた。
かわいそうな子供を哀れむことの出来る、人の親としての心を持っているんだろうなと、……その視線を見て、素直にそう思えた。

だから、そんな目で見なくてもいい答えを、俺は加納に投げた。
彼が、欲していた答えを。


「けど、藤丸がこの世界を護りたいのなら、…俺も、護りたいと思えます」
「…………」
「それが、希望なんだと、…俺は思います」


俺の言葉に、加納は一瞬目を見張り。
その後、ああ、この人は、こんな顔も出来たんだなと、感心するくらい。
何度か接してきた中で、一度も、…いや、もしかしたら、俺よりもずっと彼と長くいるはずの藤丸でさえも、見たこともないようなやさしい目で俺を見て、
「そうか」
と、一言だけ答えを返した。


そして、冒頭の台詞に戻る。

 

「九条音弥。
後は、お前に任せた」
「は? 」

あまりな話の展開で、かくんと首を持ち上げて尋ねかえした俺に、目が笑っていないのに、口の両端だけを微妙に持ち上げた加納は、確信に満ちた声で、言葉を重ねた。

「高木の約束した相手は、お前なんだろ? 」
「………」
「だから、あいつをここに連れてきた。
護れるものが、一か百かの選択を迫られれば、俺たちは迷いなく百をとる。
たとえその一が、自分にとって、なにより大事な存在だったとしても、…だ。
そうできなければ、サードアイにいる資格はない。
それが、俺たちの仕事だから。
けど、あいつは仕事だから、この事件にかかわっているわけじゃない。
手を引くチャンスは、いくらでもあったが、結局高木はそうしなかった。
それは、あいつの良心が、この事件を見過ごせない、…恐らく理由はそれだけだ。
そんな人間に、それしか道がなかったとしても、一を切り捨てる選択をさせるのは、キツイだろうことは、よくわかる。
だからあいつに、それをしろと言うつもりもない。
けど、それをしなければならない立場の人間もいるってことに、気づかなきゃならないときもくる」
「…竜之介さんのこと、…ですか? 」
「聡いガキは、結構好きだな」

俺の受け答えに、にやりと笑って見せた加納は、それだけ言って、俺を見ていた。
彼がそれを口に出しては、立場上まずいことを、俺も理解していた。
だから、俺がそれを代弁した。

「加納さんはまだ、…竜之介さんを、諦めてないんですね? 」
「あんなのを育てた人間が、そうそう簡単に、テロリストに成り下がるかよ」

視線だけで藤丸を指した加納がそういうのに、俺も苦笑するしかなかった。

「感情を優先させれば、犠牲が増えるのが現実だ。
けど、感情をなくせば、犠牲を厭わなくなる。
それでは、テロリストたちと変わらない。
だから霧島は今、必死になってその両方をなくさないために、戦っている。
どちらか一方を選ばなければならないときに、その選択を誤らないために。
ただ、そのバランスをとるのは、まだあいつには、難しいだろ? 」
「…確かに」
「だったら、それを支えてやれる人間の元へ連れて行くのが一番だって結論に達しただけだ。
それが、お前、…九条音弥だったって、わけだな」

グローブをはめているみたいに、大きな分厚い力のある手のひらで、けれど軽くぽんと、知らず力の入っていた肩を叩かれた俺は、その手が触れた部分に視線をやって、加納に聴いた。

「なんで俺だって、思ったんですか? 」
「刑事の、…勘? 」


いたずらを思いついたような顔してそう答えた加納に、俺は小さく笑って見せた。
刑事なんて枠にとらわれているような人間ではないくせに、そういって頬を緩める彼を見て、肩の力を抜いて答えた。


「あなどれませんね」
「だろ? 」


そういった加納は、徐に無線を首筋にあててから、そこに向かって、
「表に車を回しといてくれ」
とだけ手短に指示だけを言って、ガーガー言ってる無線機の向こうから、
「了解」
と返される言葉を確認し、それをきった。


「霧島は、後は俺に任せると言ったが、もっと適任の人間に任せたと、報告しとくよ」
「車、…乗って行っていいんですか? 」
「本当は俺が送るべきなんだろうけど、それでここが手薄になるんじゃ、あいつもおちおち寝てらんねぇだろ? 」
「遥ちゃんのことを、任せていいんですか? 」
「お前らの代役ってわけにはいかないけどな。
少なくとも、護衛としては、お前たちより、はるかに適任だろ? 」
「そうですね」


適任どころか。
俺と藤丸が束になっても、加納にかなわないことなど、火を見るよりも明らかなことだった。
だから俺は眉尻を下げてそう答えるしかなかった。

そんな俺の背中をバンと押し、藤丸の座るベンチのほうへ押しやった加納は、最後に、…懇願するような声の響きで、それを言った。


「あとは、…頼む」


おれは、そんな加納の声を聴き、一言だけ疑問の言葉を投げかけた。


「ひとつだけ。
…聴いても、いいですか? 」
「なんだ? 」
「一と百の選択ではなく、一と一との選択だとしたら、…加納さんは、誰を選びますか? 」


何を指しているのかを、わざとぼかした、抽象的なその問いに、一瞬だけ眉をひそめた加納の顔が見えるような気がして、俺は言葉を付け足した。


「ちなみに、俺は、高木藤丸を選びますけど」


俺の背後で、加納から、小さなため息の漏れる音が聞こえた。
また彼は、さっきと同じような目で、俺の背中を見ているのだろう。

自分を大事に出来ない、かわいそうな子供。
けど、自分にとって、大事なものがなんなのかわからない人間より、よっぽど幸福だと思っていることが、伝わればいいのにと、背中に触れている彼の大きな手を感じながら、俺は思っていた。

加納は、答えた。
俺の欲していた答えを。


「少なくとも俺は、…自分以外の人間を選べる自信は、あるよ」


俺は、背中越しに頷いた。


「その言葉、信じています」


その言葉を残して、俺は足を踏みだした。
藤丸の座っているベンチの方へ。

藤丸を護って欲しいとは、国家という目に見えない曖昧なものを第一に護らなければならない、…サードアイに属する加納の立場上、簡単にイエスと言えない願いだとわかっていて、俺はわざと質問をかえた。
それはきっと、彼に伝わったはずだ。
だからこその、その答えだった。

その答えを、本当に、俺は今、信じていたかった。
それは、祈るような気持ちですらあると、自覚していた。

藤丸の傍へ歩いていく俺の背中に、加納の視線を感じていた。
彼は、どんな想いで、俺を見ているのだろうか?
それは、わからなかった。

けど、ひとつだけわかっていることは、俺が何を遺したいと想っているのか、加納は知ってくれている。
そのことが、少しだけ、自分の肩を軽くしてくれたことを、俺は感じていた。

ベンチに座ったまま、眠ってしまったのかと思えるほど、一ミリも動かない頭をたれた藤丸の前で、俺は歩を止めた。
それと同時に、背後で加納がきびすを返して、遥の病室へ向かう気配を感じていた。

離れていく加納に、俺はもう一度、心の中でつぶやいた。
その言葉、信じています、……と。

加納が、自分と同じものを遺そうとしてくれるだろうことを願って。

 

「藤丸」

俺のかけた声に、藤丸はゆっくり、その顔を上げて、廊下の白熱灯の明かり下でも、紙のように白い顔をして、…それでも、そのまっすぐな瞳は、揺らぐことなく俺を見ていた。

「オカエリ」

声音としては、深夜の病院の廊下ということも憚って、抑えたものとなったが。
けど、はっきりと唇を動かして伝えたその言葉に、藤丸はくしゃりと笑って返してきた。


失いたくはない、絶対に。
そう想えるものに出逢えた俺は、やっぱり幸せなんですよ。
と、言葉で加納に伝えることが出来なかったことだけが、なんだか少し残念だった。
けどきっと、彼にこの想いは伝わっている。

なんの根拠もないけれど、そんな風に、俺には思えた。


遺したいものは。


廊下の明かりに照らされて、少し眩しそうに目を細め、俺を見上げてくる藤丸に、俺は笑い返した。

 


遺したいものは、…希望。

 


+++++++++ END ++++++++++

あとがき、…みたいなもの。

 

あれれ?またなんだか、暗くなってしまいました。

っていうか、今撮っておいた9話見終わったところなんですけど、これ、何話ベースよっていう、話に遅れすぎな自分の遅筆に突っ込みを入れておきます。

っつか、来週はやっぱり原作どおり音弥とJが兄弟っつーとこから続くのね~と、そして、やっぱりKは、原作どおりなのね~と、予告見ながら想った成瀬でした。

ちなみに、今回のこれは、藤丸君がJと初遭遇して、朝目覚めたら自分の部屋で、まるでそこの主のように「おはよう」って平然と言ってのけた音弥(←褒めてます(ヲイ))のシーンの前夜ってか、その朝方?に、”あったかもしれない”(←ここ、非常に重要)時間を、勝手に捏造して書いてますので、ご了承ください。

ええ、成瀬の脳みそがおかしいので、実際の作品とはなんら、関係ございません。ハイ。

こんな作でも許してくれる友人諸氏に、成瀬カンドーって感じで、恥も外聞も(←最初からないに等しいが)晒して、あげちゃいました3作目。
というわけで、感想など(苦情は、哀しくなるので、あなたの心にそっとしまって置いてください(待てコラ))よろしければ、お待ちしてます。

ええ、調子に乗って4作目も書いてるかもしれません(←あほの子)

<追伸>
いつものことですが、びっくりするくらい誤字脱字があって、泣きながら直しました(笑)多分、まだごろごろあると思いますが<死
コメントも誤字脱字だらけ。。。
でも、そっちはもう直せないので、許されて。。。

あと、メールくださってる方や、PASS請求等の対応は、水曜日までには必ずや。。。今しばらく、お待ちくださいませ。


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ドラマ版ブラマン 二次創作小説 [ドラマ版「BM」パロディ小説関連]

 ☆この記事を読まれる前に、まずはこの4つほど下のエントリにあります、パロディ小説をお読みいただくに当たっての注意書きか、サイドバーにあります注意書きかのいずれかを、必ずお読みいただいてから、それをご了承いただいた上で、お読みいただけますようお願いいたします。

下記小説は、ドラマ好きな、ブラッディマンデイの一ファンである成瀬美穂の、作品を愛するが故の、空想の産物です。
よって、実在する作品、人物等に、一切関係はございません。
上記に関し、警告がきた場合には、即刻当該ページを削除する用意がありますので、実在する作品を害する意図は、一切ないことを、併せて明記させていただきます。

========注意書きをお読みいただけましたか?
ありがとうございます。
では、どうぞ。。。

スタート。


 

// 一番罪深いのは //

【後編】

 

「音弥」


ひとしきり、藤丸は、声もなく涙してから。
本人は、長めの袖丈を、ハンカチ代わりにしたつもりはないのだろうけれども。
その半分ほどをパーカーの袖口に覆われている手のひらで、ぐいっと、いささか乱暴にぬれた頬を拭った藤丸は、はぁっと大きく息を吐き出してから。
ぷつんと、緊張の糸が切れたみたいに、とめどなくあふれ始めた彼の涙が止まるまで、わざとあさっての方を向いていた俺に、気づいていたのだろう。

藤丸の座っていたベンチから、間隔をひとつ分あけて座っていた俺の隣に、何を言うでもなく、するりと猫のように移動してきて、そこにすとんと横向きに腰を下ろすと。
藤丸は、お互いの膝頭がぶつかるくらいの距離で、シャッターの下ろされた、会計窓口の方を、見るともなしに見ていた俺の顔を覗き込むようにして、俺の名を呼んだ。

その声につられるように、俺は顔を藤丸のほうへ向けて。
薄暗い病院の廊下からもれてくる明かりにだけ、その横顔を照らされている藤丸を見やり、返事を返した。

 

「ん? 」
「泣くくらいなら、最初から、引き受けなきゃいいのにって、・・・思うか? 」


尋ねるというよりかは。
むしろ、確認するような。
普段の藤丸らしからぬ、わずかに自嘲的な色を含むその言葉に。
この状況で、そんな質問が思い浮かぶとは、…と、俺は微苦笑を浮かべながら、それを否定するための言葉を選んだ。


「いや。
藤丸の場合、引き受けるも何も、それ以外の選択肢は、最初からないようなもんだっただろ? 」
「あったよ、他の選択肢は。
もうかかわるな、やめろって…。
そうやって、止められたこともあるし、ホントにそれでいいのかと、俺の意思を確認するために、そう問われたことも、ちゃんとあった」


簡潔な俺の否定の言葉に。
無意識のうちにでも、自分が擁護されるのを嫌っているのか。
そうじゃない理由を言い募ろうとする藤丸に、俺は、心底苦笑いしか浮ばなかった。

だってそうだろう?
他人から、危ないから辞めろといわれて、単純に、はいそうですかって引き下がるような人間だったら。
最初から、ハッキングに手を染めて、現代のねずみ小僧よろしく、ハッカーとして危ない橋を渡る必要など、一切ないのだから。
……中学生の分際で。

でも当時、中学生の藤丸は、それが危ないことだとわかっていても、辞めなかった。
誰かが、そうしなければ、どうしようもないのなら。
その”誰か”が、たまたま自分だっただけで。
ならば、やらなければならないという気持ちを、辞める選択肢は、藤丸の中では、皆無だったのだ。
だからこそ、伝説のハッカーファルコンは、生まれた。

そして、高校生となった今も、それはかわらない。

藤丸は、やり方がどうであれ。
自分のやっていることが、正義だと声高に叫ぶつもりは毛頭ないが。
間違っているとも、思っていない。
それがいかに危険で、いわゆる一般的なルールというものを、少なからず侵していたとしても。
それでも、辞めないことが正しいことだと、藤丸自身がそう思う限り、彼を止めることは出来ない。
なん人たりとも。

そんな藤丸の、簡単には表面に現れてこない一面を知らない人間が、上っ面だけで止めたところで、彼がそんな言葉を聞くわけがないし。
逆に、高木藤丸という人間が、そういう人間だとわかっていて、あえて、いいのか? と、聞いている節すら、サードアイの人間には感じられる現状では、そうやって、形だけいいのかと、是非を確認されたところで、それを”他の選択肢”と呼ぶには、かなりの無理があると、俺は思っていた。

だから、尚も食い下がろうとする藤丸に、あっさりとした答えを、俺は返した。

起ろうとしている。
いや、もしかすると、もう、すでにその序幕が上がってしまっている、未曾有のウイルステロを前にして。
ロシアでの、クリスマスの惨劇を知っていながら、同じことが、この日本で引き起こされようとしている今、この瞬間に。
結果として、護れなかった命も、失わせてしまった命も、確かにあった。

けど藤丸は、今日一日だけでも、もう、十分といっていいほど傷ついた。
ならばこれ以上、藤丸が、自分で自分を傷つける必要など、ないのだから。


だから俺は、ひとつ息を吸ってから、口を開いた。


「確かに、YesかNoか。
厳密に言うならば、藤丸にそれを選ぶ余地は、何度もあったはずだし、手を引くタイミングは、いくらでもあったと思う」

そんな台詞を、淡々とつむぐ俺の口元だけを見ている藤丸は、自分で言い出した事ながら、見る間にしゅんとした表情を浮かべて、眉尻を下げた。
それがまるで、しかられた犬のように見て、苦笑を深めた俺は、その先の言葉を急いだ。

「けど、藤丸には、自分の命と人の命とを、天秤にかけるなんてことは、できないよ。
俺の知っている”高木藤丸”は、そういう人間だ」


ものすごく確証を持った言い方で、すらっとそんな言葉を口にした俺に、狐につままれたような顔で、目をぱちくりやった藤丸は、次の瞬間には、完全には濡れた目元を押さえ切れていなかったのか、再び涙がにじんできそうな、泣き笑いの顔を浮かべて、口を開いた。


「音弥は俺のこと、……かいかぶりすぎ」


調子っぱずれな声で、途切れがちなその藤丸の台詞を、一笑に付して、俺は話を続けた。

「そうでもないぜ。
コレでもだいぶ、過少評価だけどな、俺的には」
「今日の朝までは、自分の味方だと思っていた人が、その昼には、銃口を向けてくる敵になってて…。
テロリストとして、目の前で自殺されたことを、夜には妹に説明しなきゃいけなくなってたことくらいで、泣くような、…弱い人間でも? 」


まるで人事のような硬い声で。
そういいながら、俺に向かって首をかしげて、上目使いに俺を見てくる藤丸に、一瞬言葉を返せなかった。

なぜなら。

俺だって、わかってはいたつもりだった。
これは、遊びじゃないことを。
襲い来るテロは、パソコンの中のゲームじゃない。
人の命が、簡単に消されてしまう。
今起っていることは、そんな、残酷な現実なんだってことを。

けど、こうやって、改めて言葉にしてみると、なんて殺伐とした出来事だったんだろうと。
今日のことも含めて。
藤丸の父親が失踪した日から始まる、不幸の連鎖のような短い日々を思い浮かべて、俺は思わず唇をかんだ。

俺は藤丸を、過大評価しているつもりはない。
むしろ、自分の友人だから、甘く見てしまうかもしれない部分を差し引いて、わざと評価を辛くしている自覚もある。

俺も藤丸と同じ高校生で。
そして、藤丸のように、何かに秀でた力があるわけではない。
そんな自分に唯一、人より勝っている部分があるとすれば、それは、いざって時に、出来る限り冷静でいられる精神を、常に保つ努力を忘れないことくらいだ。
だからこそ、藤丸の評価に限らず、基本的に常に最悪の状況を想定して、物事を考えるようにしている。

すべてがうまくいったときのことを考えて行動すれば、しっぺ返しを喰らうのは自分だと、わかっているから。


そんな俺の考えをもってしても、今自分の目の前にいる藤丸を、弱い人間だとは、決して思えなかった。

藤丸は、本人がいうような弱い人間ではない。
でなければ、今ここに座っていることなど、なかったはずだ。
けれども、今、藤丸が置かれている現状を、そんな簡単に容認していていいのだろうか? と、不図、そんな不安に襲われた。

藤丸は、決して弱い人間なんかじゃない。
けど、今の状況を当たり前に受け入れられるほどの、強い人間である必要はないし、そうあろうとして、いつか、そのひずみが出てしまう可能性を考えれば、周りの人間が、藤丸を強いと思いすぎることは、ある意味危険だとも思えた。


人の死に慣れてしまうことが、強い人間であるとは、言えないし。
藤丸が、これ以上強くなる必要などないということを、俺は彼に伝えたかった。
だから俺は、ゆっくりと言葉をすすめた。


「人が一人死んでいるんだ。
それも、自分の身近にいた人が、自分の目の前で。
それを、”たかがそれくらいのこと”、…なんて、軽々しく、いえるようなことじゃないのは、当然のことだろ?
それに。
別に、泣く人間が弱くて、泣かない人間が強いとも限らないからな。
泣きながらでも、やらなきゃならないことだってあるだろうし。
それでもなお、辞めようとはしないことのほうが、本当の強さだと、…俺は、思う」


そこまで一気に話した俺に、それを黙って聞いていた藤丸は、ふっと瞼を閉じて、少しだけ考えるしぐさをすると、次に瞳を開けたときには、わずかにすっきりとした目をしていて。
俺の言葉がちゃんと届いたことを確証した俺は、安堵して、縫いとめていた視線を藤丸から離し。
看護士か警察官か。
どちらかかの判断はつきかねたが、また一人、パタパタと廊下の向こうを走り抜けていった人影を、視線で追っていた。

が、不意に隣の藤丸から、尋ねる声が囁かれた。

「でも多分、音弥は泣かないだろ? 」

いつもの藤丸に戻った声で。
けれど、先の話の続きのようなそれに、俺はあわててからだの向きを元に戻して、藤丸を見た。

「は? なんで急に、俺の話になるわけ? 」
「いや、ふと、そう思ったから」
「なにが? 」
「音弥が、俺と同じ立場に立ったとしても。
音弥だったら、きっと、…泣かないだろうなって。
いや、多分、…絶対、泣かない」


ぽつぽつとそう話す藤丸は、最後には妙に断定的な声色で、そういった。

大方、一旦は俺の言葉に納得しておきながら。
基本、驚くほどの負けず嫌いな藤丸の性格からして、なんとなく、良いように俺に宥められたような気がして、そんなことを想いついたのだろうけれども。

こればかりは、さすがに俺も、飽きれるほかなかった。

だからこそ、大仰にため息をついてから、飽きれ交じりの声で、答えを返した。


「それ、…ありえないから」
「えっ? 」
「そのシチュエーション自体、まずありえないってこと」
「…なんで? 」
「言っとくけど、俺だったら、人の命よりも、まず自分の命を選ぶ。
天秤の反対側にのせられるものが、お前や遥ちゃんみたく、…俺が大事だと思える一握りの人間の命じゃない限り、俺は間違いなく自分の命を選ぶ」
「それは俺だって…」
「いや、俺と藤丸は、根本的にスタートラインが違ってる」
「は? 」
「藤丸は、多分、無意識のうちにでも、…どう生きるかを考えて、自分のやるべきことを選んでるんだと思う。
けど俺は、なぜ生きるかを考えて、自分のやるべきことを選ぶ人間なんだ」
「…どういう意味? 」
「お前、言ってただろ? 
城南ショッピングセンターで、偽のウイルステロ騒ぎに巻き込まれたときのこと。
あの場で、目の前で行き惑う多くの人間が死ぬことが、パニックの中突き飛ばされて泣き叫んでる女の子を見ているだけしかできなかった自分が、…何よりも悔しかったって。
だから、絶対にテロは許せないって」
「言ったよ。
でもそれって、誰だってそう思うだろ? 」
「俺は思わない」
「なに言って…」

誰だってそう思うだろうという藤丸の意見を、きっぱりと否定した俺に、戸惑いを隠せない声を出した藤丸を横目で見ながら、俺は話の続きをした。

「確かに、わけわかんないうちに、ウイルステロなんかに巻き込まれて、犠牲になる人間が、目の前に山ほどいるって状況を目の当たりにすれば、それは、哀しいことだと、…俺だって、思うかもしれない。
なんとかならないものなのか、なにかしてやれることはないのか、…そう、考えはするだろう」

俺がそこで言葉を切ると、うんうんと、頷かんばかりに、藤丸は俺をじっと見ていた。

「で、実際のとこ、けど何も出来ないとなれば、それは、悔しいと感じるとは、俺も思う」
「だろ? 」

俺がそういうと、案の定藤丸は、首肯しつつそういった。
が、俺はそこで、話の核心を口にした。

「ただしそれは。
自分が、安全な場所にいるとしたら、…っていう、絶対的な仮定条件がついていれば、の話だ」

俺の言葉に、困ったように眉を寄せた藤丸は。
けれど、返す言葉を見つけられずに、じっと黙ったまま、自分の指先を反対の手でぎゅっと握り絞めているだけだった。

「ウイルステロが起きるのは、藤丸のせいじゃない。
それでも、そのテロをとめることができなくて、結果、たくさんの犠牲者が出るのだとすれば。
それは、哀しいし、悔しい。
けどな、本当なら、不幸にも、その場に居合わせた藤丸自身が、…一番に、自分もそのウイルステロの犠牲になって、もうすぐ確実に死んでしまう人間の一人だってことを、哀しむのが、…それを悔しいと感じるのが、普通なんだ。
自分以外の人間のことではなく。
自分が、ウイルステロなんかに、巻き込まれた不幸な人間の一人なんだってことを、普通は考えるんだ」
「それは…」

畳み掛けるような俺の声に、言葉に詰まった藤丸を促すように、俺は言葉を付け足した。

「あの時は、そんなこと、考えてる暇がなかった? 」
「…そうなのかも」

実際、あの場で藤丸は、そんなことを露ほども考えなかったのだろう。
だから、そんなあいまいな言葉しか返せなかったが、それこそが、本当にそんなことを考えなかったという、何よりも明らかな証拠だった。

だから俺は、そのときのことに考えをめぐらせるように、少し遠い目をしている藤丸を見ながら、ふぅっと息をついて、藤丸に言葉を投げた。

「それが答えだよ」
「へ? 」

俺の答えに、素っ頓狂な声で返した藤丸は、弾かれたように顔を上げて、俺を見ていた。

「藤丸だって見たんだろ? その現場で。
自分が死ぬかも? って状況に陥ったときに、人がどんな行動をとるのか」
「見たけど…」

俺が今から何を言わんとしているのか、うすうす感ずいている聡い藤丸は、言葉尻を濁してそう言った。

「俺はその場にはいなかった。
けど、そんなもの、その場でみていなくても、大方の見当はつく。
人を押しのけてでも、自分だけは助かりたいって、…そう思う人間ばかりで。
きっとほとんどの人間が、周りの状況になんて、目を向けてなどなかった。
だから、その転ばされた小さな女の子が泣き叫んでいても、誰も手を差し出すことすらしなかった。
違うか? 」
「でも、それはっ! 」
「そう。
でもそれは、あの状況なら、仕方のないことだった。
……ただ、藤丸は、そうしなかった、…ってだけで」
「俺だって、死にたくないって思わなかったわけじゃない」
「けど、偽のウイルステロに踊らされた人間たちが、ショッピングセンターから飛び出したところを、ウイルスのアウトブレイクを防ぐためだけに、冷酷なその判断で、一般人に銃の照準を定めてるPSSTの連中に、無抵抗で蜂の巣にされるのを、指をくわえてみていたくなかったんだよな、藤丸は。
だから、例え相手が、我先にとショッピングセンターから出て行こうとした、ある種自分勝手な人間達であったとしても、PSSTの連中の銃口の前に自分が立ちはだかって、PSSTの連中から、そんな人間達を、…護ろうとしたんだよな? 」

 

そう。
あの出来事があった後、藤丸から聞いたその一部始終は。
今考えただけでも、身震いがするほど、本当に、紙一重の差で、俺は、自分の大切な友人を、失わずにすんだとしか言いようがないほど、危ういものだったのだ。
あの出来事の顛末は。

けど、それほどまでの危険を冒してでも、藤丸は救いたかったのだろう。
ウイルステロなんかを企てた連中から。
そして、起ってしまった出来事に、小さな犠牲は厭わぬ姿勢で対応する連中から。
そんな人間達を。

 

「あそこから出ようとしていたのは、みんなパニック状態に陥ってたからで、別に…」
「別に俺は、それが悪いことだといってるわけじゃない」

取り立てて、非難がましく言ったつもりはなかったが、そうとったのだろう藤丸は、あわててそんな言葉を言い募ろうとしたが、それをとめるように、俺は言葉をかぶせた。
そのせいで、藤丸は、先の言葉を飲み込まざるを得なかった。

「俺だって、もしも自分がそんなことに巻き込まれたら、他人にかまわず、自分が助かる方法を模索する。
それが、当たり前のことだと思うから」
「………」
「ただし、俺は。
パニクっても、無駄なのわかってるから、あくまでも冷静にって思うけどな」
「音弥…」
「けど、やってることは、同じことだ。
冷静だろうが狼狽してようが、ようは、自分が助かる方法のみを考えてしまう、…それが、人だから。
人は、生きてて何ぼ。
俺にとっては、どう生きるのかが、問題じゃない。
なぜ生きるのか。
俺には、そのほうが大事で、その意味を見つけられるのは、人が生きているからだ。
どう生きるのかを考えるのなら、人を足蹴にして自分だけ助かっても、それは自分が納得できる生き方ではないかもしれない。
けど俺は、どんな形でも、生き残ることのほうが大事だと考える。
仮にその場で、一度負けても、生きてさえいれば、次は、勝機が訪れるかもしれない。
けど、死んだら人間は終わりだ。
だから、俺は自分の守りたいものだけを守る。
その結果、失われたものがあったとしても、それは、仕方のないことだと思う。
そういう人間は、確かに、…結果的に、そこで切り捨てられる命があったとしても、泣いたりはしない。
けど、泣かないことが、イコール強いってことじゃない。
本当は、いざって時に、自分自身ではなく、周りに目を向けることができる人間の方が、強いんだ。
藤丸のようにな」


そう締めくくった俺を、これでもかというほど凝視していた藤丸は、ゆうに30秒は動きを止めていたけれど、ようやくすとんと肩の力を抜いて、へらっと、彼らしい、年相応の笑みをのぞかせた。


「音弥って…」
「ん? 」
「上手いよなぁ」
「何が? 」
「なんか、…そうなのかも? って思わせるのが」
「…はぁ? 」
「やけに説得力があるって言うか、なんていうか。
俺には、絶対に出来ないことだなって、今無性に思った」
「だから、何が」


要領を得ない言葉を吐き続ける藤丸に、辛抱強く付き合うことに慣れている俺は、彼が話しやすいように、言葉を促すと、表情が若干翳った藤丸は、それでも普通のトーンで、そんなことを口にした。


「俺は、意味わかんないこと言われたら、意味わかんないってことしか言えない」
「意味わかんないんだから、それでいいんじゃね? 」

俺の返しに、ふるふると首を左右に振った藤丸は、続きの言葉を言った。

「分かり合うための言葉が、俺にはなかった。
だから、宝生さんも…」

藤丸の言葉が途切れた。
俺は、それかよ、…と、なぜだかマイナス思考に傾きがちな今日の藤丸の軌道修正を図るために、わざと淡白な声で先を引きうけた。

「彼女が自殺するのを、止められなかった? 」
「…………」
「そんなの、誰にも止められなかったさ。
世の中は、バランスとタイミングで出来てる。
止められるものなら、誰にだって止められてた。
けど、それが出来なかったのなら、タイミングが悪かったんだ。
ただ、それだけだよ。
誰のせいでもない」


それでもあえて、誰かのせいだというのなら、自分自身のせいだとは、さすがに今の藤丸に言うのは憚られてその先は黙った。
すると、藤丸は、俺がそんなことを考えているのなど、これっぽっちも気づいていたないのか、素直に表情を崩して、薄暗い天井を振り仰いだ。


「やっぱ、上手いな、…音弥は」
「まあ、俺にも政治家の血が流れてるから、藤丸より演説が上手くても、当たり前なんじゃん? 」
「……バカ」

俺の茶化した言葉に、そう返した藤丸を。
けれど、今日ばかりは許してやろうと、俺はなにも反論をしなかった。
しなかったからか、藤丸は一人で何もない天井を見ながら、ぽつりと言葉を漏らした。

「加納さんも、…今頃、泣いてるのかな? 」
「さあ、…な。
あの人は、殊勝に泣くってタイプじゃ、ないだろうけど」

サードアイの連中の中で、実動部隊の人間だからか。
藤丸から聞いた指揮官の霧島より、実際に面と向かってあったことのある分、加納という人間を俺なりに理解しているつもりだった。
言葉は悪いし、態度も悪い。
当然、藤丸の扱いはぞんざいだが、そこに嘘がない分、司令室でのうのうと座って戦局を眺めているだけの上の人間よりかは、信じられる人間だとも思う。

ただ、あの昭和初期の父親を地で行くような人間が、仲間の裏切りと自殺に涙するとは、思えなかった。
どんなに哀しいことがあったとしても、泣かないことが、男の勲章位に思ってるタイプの人間だ。
あの手の人間は。

だから俺はそういった。
藤丸は、そうは思わなかったようだが。


「けどきっと、俺よりずっと哀しい思いをしてると思う」
「どうだろうな」
「遥は、……泣いてんだろうな、きっと」
「だろうな」

上の病室で眠れぬ夜を過ごすであろう妹を想ってか、すうっと細められた目は、その薄暗い天井のその向こうへ向けられていた。

確かに、今頃遥は、ベッドの上で、一人泣いているのだろう。
けど、その涙の半分は、兄を想ってのものだろうと、喉まででかかったが、それは言わずにおいた。
言われても、藤丸が余計につらくなるだけだと思ったから。


「こんな風に、泣かなきゃいけない人が、…もうこれ以上、増えなければ、いいな」
「まあな、…難しいだろうけど」


もしも、本当にウイルステロを企む連中が、藤丸がハッキングして、解読したデータに残されていた、ロシアでのクリスマスの惨劇を、この東京で起こすつもりでいるのならば。
きっと現実は、待ってはくれないし。
今起きていることは、序章に過ぎないのだとしたら。
これ以上の犠牲を阻むことは、…正直、難しいとしか言えなかった。
だからそういった。

しかし藤丸は、くいっと顎を引き、俺を真正面から見るようにからだを傾けて、言った。


「けど、無理ってわけじゃないはずだろ?
そのためにも、俺は俺にできることをやる」

まっすぐなその瞳を、自分の友人として、誇らしいと思うと同時に、哀しいと感じる自分もいて、俺は落としそうになったため息を飲み込んだ。

「それで藤丸が、この国を、…この世界を、護ってやるのか? 」
「この世界を護るのは、俺じゃないよ。
世界を護るのは、たった一人の人間で、できることじゃない。
誰かを護りたいと思う、そういう気持ちを持った人間が、その誰かのいる世界を護るために、動く。
そういう一人一人の想いの積み重ねが。
それが、結果的に、世界を護ることになると、…俺は思う」
「だったらいいな」


本当に。
そうだったら、どんなにいいだろうと、俺は思った。

けれど、過酷な現実は、皮肉としか言いようのないタイミングで、藤丸の携帯の着信音と共に、やってきた。

病院の廊下に鳴り響く、不似合いな、携帯の着信音。
ポケットにねじ込まれていたそれを取り出して、発信元にチラリと目をやった藤丸は、やはりきたか、…といった顔をしてから俺を見、罰の悪そうな顔をして、その動きを止めた。


「出ろよ。
携帯、なってるぞ」
「わかってる」
「なら、さっさと出ろよ」


そんな会話を交わしている間にも、着信音はしつこく鳴り続け。
けれど、それでも出ようとはしない藤丸に根負けしたのか、10コールを過ぎたあたりで、ぴたりと甲高い音を響かせていた着信音が、やんだ。

藤丸は、自分の手の中で、不在着信を知らせる光が点滅するそれを見下ろし、唇をかんでいた。

それが、どこからかかってきて、何を知らせるものなのか。
話を聞くまでもなく、藤丸も、…そして俺も、わかっていた。

だからこそ、藤丸は携帯に出ることに躊躇した。
俺が、わかっていることを、わかっていたから。

そうきっと。
さっきの電話は、サードアイの人間からで。
用件は、藤丸を囮にして、テロリストの連中を釣り上げるための算段なのだろう。
今日の今日で、このタイミング。
普通なら、今夜はやらない。

けど、普通の感覚でやらないことをやってこそ、成功の確率があがることを、サードアイの人間は、計算づくなのだ。
だから、あんなことがあった夜であるにもかかわらず、藤丸の携帯を平気で鳴らしてこれたのだ。


いや。
サードアイの内部から裏切り者を出してしまった以上。
もはや一刻の猶予も許されない状態なのはわかる。
しかも、相手は未だに、折原マヤ、…たった一人しか、その存在を確認できていない、雲をつかむような存在のテロリスト集団なのだ。
ならば、サードアイの人間が手段を選ばない方法に打って出るのは、わかりきったことで。

発信機でもつけさせた藤丸を泳がせて、テロリストの連中に拉致らせるのが、彼らにたどり着く一番の早道なんだってことは、一般人の俺にだって、ちょっと考えさえすれば、すぐにわかることだった。
ただ、藤丸の身に及ぶ危険性は、完全に度外視されている方法ではあるけれども。

それがわかっていたから、藤丸は携帯に出るのをためらったのだ。
自分がその役を振られることにびびったからではない。
俺がそのことを知っていて、藤丸を行かせなければならない重荷を、俺に背負わせたくなかったから、…ただ、それだけだ。


手の中でちかちかと明滅する光を放つ携帯を握り締める藤丸と、そんな彼を見ているだけの俺の間に、深い沈黙が落ちていた。
そして、どちらからともなく顔を上げると、目が合った瞬間、わかってしまった。
お互いの想いが。


「かけ直せよ、すぐに。
多分あっちは、藤丸からの連絡を、待ってる」
「…けど」
「あっちのスタッフステーションの前なら、公衆電話もあったし、携帯電話での通話OKって書いてたぜ。
それに、あそこには、ほとんど人がいない」

俺がそういって、座った姿勢のまま、向こう側を指差すと、そちらにちらっと視線をやった藤丸は、すぐに俺に視線を戻してきた。

「行けよ。
遥ちゃんには、俺がついてる」
「音弥…」
「サードアイの人間だって、この国から見れば、その安全を守るための、ただの切捨て要員だ。
そのサードアイの人間からすれば、藤丸なんて、利用できるときだけ利用する、捨て駒のひとつに過ぎない。
でもお前は、サードアイの連中に、自分が使い捨てにされるってことくらい、とっくの昔に、覚悟済みなんだろ? 」


胸糞の悪い話だが、それが事実である以上そういうしかなかった。
そして藤丸も、こくんと、遠慮がちに肯定の返事を返してきた。


「だったら、行けよ。
…ただし、朝田のコトバを忘れんな。
サードアイの人間からしたら、藤丸は、ただの捨て駒だったとしても。
お前がいなくなったら、困ったり、寂しく思ったりする人間が、…確実にいるってことを。
絶対に、忘れるな。
そして必ず、…帰って来い」
「わかった、音弥。
遥のこと、頼むな。
……イッテキマス」


口をへの字に曲げて、上手に笑えてないことをわかっているくせに、最後まで声の調子だけは、なるべく明るく振舞おうとした藤丸に、俺はそれ以上何もいうことは出来ずに、その背中を見送った。

リノリウムの床を走る、藤丸のスニーカーのきゅっきゅっという音が次第に遠くなっていくことを、目を閉じて聞き入っていた俺は、それが完全に聞こえなくなったところで、目を開いた。

明かりの落とされた、暗い病院の待合室の闇が、これから先を暗示しているようで、かぶりを振った。

その勢いで、ふと、ベンチの背もたれに残されていた黒いジャケットが、視界に入った。
藤丸の忘れていった、肩にサードアイのネームが入った、ジャケットだった。

俺は、ベンチから立ち上がって、最新鋭の素材で出来ているからか、その見た目より軽いジャケットを手にとり、服にしわがよるほど、握り締めていた。

このジャケットが、藤丸を護ることは、ないのだという事実が、俺をそうさせていた。

このサードアイのジャケットを、怪我の治療を終えた藤丸の肩にかけたのはきっと、あの強面のサードアイ課員である、加納だろう。
サードアイの指揮官である霧島も、その課員である加納も。
この国を護ろうと思ってサードアイに身をおく以上、藤丸のことだって、最初から切り捨てることを前提に、取り込んだわけではないんだろうけれども。

それでも、高木竜之介の息子である藤丸が、自分の身に危険が迫った程度で、それ以上に危険に曝されている人間がいることを知ってしまっては、途中で戦線離脱するような人間ではないことも、わかっているはずだった。

わかっていて、藤丸を矢面に立たせるようなまねを、平気でしている。
その、ハッカーとしての力だけを、利用するために。

もちろん、利用価値があるうちは、藤丸が護ろうとする遥も、藤丸自身も、護ろうとはしてくれるのだろう。
実際、宝生小百合は、その為に、藤丸や遥と行動をともにしていたのだから。
結果、彼女自身が、テロリスト側の人間だったというだけで。

だから、サードアイは、今は藤丸を手放すつもりはないのだろう。

ただ、最悪、状況に応じて、この国を護るために、藤丸がマイナス要素と成りえたときは、躊躇なく、切り捨てるだろうことも、疑いようもない事実だと思う。

そして、藤丸は、誰よりも、そのことを理解している。
その上で、彼らの駒になろうとしているのだ。


なんて罪深いのだろうと、溜めていた息が漏れた。


ウイルステロなんて、わけのわからないことを考え付いた人間達。
そんな、理解しようのない、テロリスト達を生んだ国家という存在。
その国家を護るために、一人の高校生を餌に、テロリストをおびき寄せようとするサードアイ。

責任を取らない大人たちばかりが、のうのうと生きているこの世界を護ろうと、必死になっている子供が、犠牲にされる現実。


そのどれもが、罪深いことこの上ないと思えた。

 

”この国は、一度滅びなければならない”


宝生小百合が、最期に遺した言葉だ。
それは、確かに、その通りなのかもしれない。

けれど、滅びたあとに訪れる世界が、今よりわずかでもましである保障は、どこにもない。
ならば、今あるこの世界を護ることを優先するのは、致し方ないのだろう。

たとえそれが、どんなに罪深いことだったとしても。


そのために、犠牲にされることを厭わない人間がいることを、俺は知っている。
そして、俺と同じように、それを知っているからこそ、藤丸を使うサードアイ。


だけど、サードアイの人間は知らない。
藤丸が、それを全部わかっていて、それでも、自分が利用されることを受け入れたことを。
どんな想いで、藤丸がその答えを出したのかということを。
そして、今藤丸が、何を想っているのかを。

ほんの少し前、ここで流された涙があったことを。
藤丸の覚悟と、哀しみを。
彼らは知らない。

もしかしたら、知らないのではなく、知ろうとしていない、…が、正しい答えで。
彼らは、駒の気持ちを知る必要は、ないのかもしれない。

知れば使えなくなるかもしれないから。
使う側とて、同じ、心持った人間なのだから。

だから、知らないままに、藤丸を利用しようとしているのだろう。


知らないことは、罪ではないが。
知ろうとしないことは、罪だと思う。


けど、一番罪深いのは。
本当は、知っているのに、何も出来ないこと。
何も出来ないのに、藤丸の背中を押してしまったこと。

全部わかっていて、止められなかった。
いや、止めようとすら、しなかったこと。


罪深い人間達を護るために、走っていった藤丸の背中が、目に焼きついて、離れなかった。

瞼に焼き付けられた残像を、覆い隠すように、藤丸の着ていたサードアイのジャケットを、無理やり自分の顔に押し付けた。
無駄なこととわかっていながら。


どうか、無事で。


そんな言葉しか思い浮かばない自分に嫌気がさして。
口元を覆うジャケットのせいで、くぐもった声しか自分の耳に届かなかったが、俺は懺悔のようなそれを、唇に乗せた。

 

「一番罪深いのは、……俺か」

 

 

end

 

 


あとがき。。。のようなもの。

あれ?
相変わらず、気がついたら長文になってる成瀬の、例によって例のごとく、長文にお付き合いいただきありがとうございました。

でも、こんな長くなる予定じゃなかったはずなのにな。。。

そして、なんか暗い?
っていうか、すごく暗い?

やだ、もう少し明るいの予定してたのに。
まずい、時間があれば、また違うシーンでリベンジしたいです、ホント、ごめんなさい(疲れてるのかしら?あたし)

さて、今回のでようやくタイトルの意味がわかったという、不親切さ。
前編を見た時点で、で、このタイトルの意味は?って思われた方、多数とお見受けしますが、こういう終わり方の予定だったので、このタイトルでした。。。(いまさら?)

というわけで、一番罪深いのは。
まかりまちがっても、音弥じゃないと、私は思うのですが、マンガ原作とドラマがどうなってくのかわかんない状況で、こんなの書いてるのはちょっとまずいかもしれませんが、これは成瀬の空想なので、気にしないでください(お前が気にしろ)

そうそう、今週末は、友人の結婚式です☆
久しぶりに学生時代の友人と会って、楽しんできます♪
それまでに、もう一本くらいあげてたら、笑ってやってください(でも、多分、無理?)


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ドラマ版ブラマン パロディ小説☆第一弾 [ドラマ版「BM」パロディ小説関連]

☆この記事を読まれる前に、まずはこのすぐ下のエントリにあります、パロディ小説をお読みいただくに当たっての注意書きか、サイドバーにあります注意書きかのいずれかを、必ずお読みいただいてから、それをご了承いただいた上で、お読みいただけますようお願いいたします。

下記小説は、ドラマ好きな、ブラッディマンデイの一ファンである成瀬美穂の、作品を愛するが故の、空想の産物です。
よって、実在する作品、人物等に、一切関係はございません。
上記に関し、警告がきた場合には、即刻当該ページを削除する用意がありますので、実在する作品を害する意図は、一切ないことを、併せて明記させていただきます。

========注意書きをお読みいただけましたか?
ありがとうございます。
では、どうぞ。。。

スタート。


 

// 一番罪深いのは //

【前編】

 

消灯時間はとっくに過ぎたはずの。
城南医大救命救急センターのエントランスには。

けれど、いまだ絶え間ない人の出入りが続いていて。
明かりの落とされた廊下の向こうからも、高い足音を響かせて、警察官の黒い制服姿の人間や、見たこともないような、黒ずくめの戦闘服姿の人間が、先ほどから消えては現れ、現れては消え、…といった。
その、非日常的な光景と、本来ならば、静寂に包まれているはずの夜の病院という場所のアンバランスさがあいまって。
その多くの大人たちが、一体なにをやっているのか、甚だ見当もつかない動きを繰り返していた。

そんなあわただしい空気の中で。
のんびりと、そこから少し奥まったベンチに腰を下ろして。
そちらとは反対のガラス窓の向こうを、ひたすら、見るともなしに眺めている自分たちだけが、そこでは妙に浮いた存在で。

まるで、自分たちが今現実に、おかれている状況そのままに。
周りから置いてきぼりにされている格好で。
真っ白な紙の上に、ぽつんと、意味もなく落とされてしまった、墨汁の小さな黒いしみのように。
酷く場違いな様子で、その場に留まっていた。

 


生来の、朝田あおいという人間をして。
彼女の性格から想像するに、本当は、言いたかったことの半分も、言っていなかったのかもしれないが。
それでも、彼女なりに、藤丸が、遥の病室から下に降りてくるまで。

ずっと、ある程度のことを知っていながら、知らないフリを続けていた俺から、わざと少し離れた場所に座り。
身じろぎもせず、心に溜め込んでいたことを。
そんなあおいの心うちをわかっていて、それでもなお、なにも話しかけようとはしなかった、不誠実な自分とは違い。
本来、心配されるべき立場であったはずの人間の癖に、本心から、あおいのことを心配して声をかけてきた藤丸に。
ようやく、思い切り、それまで溜め込んでいた想いをぶつけたことで、とりあえず落ち着きを取り戻したあおいは、サードアイの人間に送られて、半時間ほど前に、遅い帰宅の途についていた。


そして、その場に残された、藤丸と俺は、何をするでもなく。
城南地区の3次救急を一手に引き受ける、完全に電子カルテ化された、総合病院らしく。
大病院の総合受付ぜんと、数台が並べて設置された、自動受診受付機の陰になっている、簡易ソファ状のベンチに腰を下ろし。
口をつぐんで、暗がりの向こうなど、なにも映すはずもないガラス窓の向こうを。
その何もない暗闇を、食い入るように見つめている藤丸と、そんな彼を見ているだけの自分とを。
まるで、あざ笑うかのように、忙しなく行きかう人いきれと、無遠慮に進み続ける時間の狭間で。
ただ、息を殺すように、自分たちは存在していた。


そんな、無意味で重苦しい時間を、これ以上無駄に過ごすことに、先に根を上げたのは。
普段の彼ならば、やりたいことは、素直にやって、やりたくないことには、見向きもしない、…そんな、我慢強いなどという言葉とは縁遠いはずの。
ある意味、子供のように振舞う藤丸ではなく、…冷静沈着がウリのはずの、俺の方だった。

 

「よかったのか? 」
「……なにが? 」


不意に告げられた俺の問いかけに、遠くに視線をやったままの藤丸は、一応、俺の言葉に反応するように答えては見たものの。
そこには、心ここにあらずといった。
まるで覇気のない、気の抜けた声が返ってきて。
俺は、そんな藤丸の態度に、こぼしかけたため息を飲み込んで、遠まわしな言い方をわざと避けて、ストレートに言葉を放った。


「宝生小百合のこと」
「…っ聞いてたのか? 」


その名前を聞いて、座っていたベンチがきしむのではないかと思えるほど、びくりと肩を揺らした藤丸は。
先ほどまでの項垂れ具合からは想像もつかないほど、すばやい動きで顔を上げてこちらを向き、にらみつけるようにして、俺を見た。

「人聞きの悪い言い方をするな。
聞こえていたんだ、…病室の外まで」

あからさまに、非難がましい視線を向けてくる藤丸を、軽くあしらうように俺がそういうと。
肩をすくめた藤丸は、俺相手に、口で勝つ気などさらさらないらしく。
そうそうに、今更か、…といった顔をしてから。
諦めたように、で? と、言わんばかりに、目で話の先を促していた。


「お前、遥ちゃんに、…言ってただろ? 
宝生小百合は、人の命を無差別に奪う、狂ったテロリストだって。
……けど本当は、お前だって」
「いいんだ。
いいんだよ、あれで…」


俺の言いかけた言葉を、遮るように口を開いた藤丸は。
そういって、自分を言い聞かせるように、うつむき加減に、”いいんだ”と、同じ言葉を繰り返した。

まるで、その言葉を呪文のように口にする藤丸の横顔が、自分の目には、…いや、恐らく、その少し引かれた顎のラインを形作る影を目にした者の、誰の目にも。
それが、酷く哀しいものにしか、見えなかった。

自分たちの目の前に、いやがおうにも、突きつけられた現実に。
今にも、泣き出しそうな瞳をしていた遥や、悔しそうに、静かに涙を落としたあおいと違って。
藤丸は、泣いてなど、いなかった。

涙も、泣き声も、…確かにそこにはなかった。

今俺の前で、”いいんだ”と言い切る姿も。
半時前、遥の問いかけに、”そうだ”と言い切ったときも。
そのどちらも、硬く揺るぎない声で。
決してその声が、迷いを含んで、震えることさえ、…なかった。


けれど、その横顔は、……泣いていた。
俺には、そういう風にしか、見えなかった。


だから俺が、何かを言いかけようとしたとき。
先にその、俺が気づいたことに、気がついた藤丸は。
俺に何も言わせないためにか。

性急に言葉をつむいで。
話を勝手に、結論付けようとした。

 

「遥を、傷つけたことくらいわかってる。
けど、俺は、遥の言おうとしたことを、認めるわけにはいかない。
宝生が悪い人間だったのかと問われれば、俺は、”そうだ”と答えるしかない。
でなきゃ、…宝生のしようとしたことを肯定したら、…それはイコール、テロリストの原理を肯定することになる。
そんなことをしたら、…あいつらに命を奪われた、罪もない人たちが、浮ばれない。
だから、俺は…」
「罪もない、…ね。
罪のない人間なんて、この世に一人もいないと、俺は思うけどね」


”だから俺は”の先を、藤丸に言わせたくなかった俺は。
今度は俺が藤丸の言葉を遮って、言葉を重ねた。

そして、嘯くように俺がそういうと。
その俺の言葉を耳にした藤丸は、弾かれたように顔を上げ、咎めるような声色で、
「音弥っ! 」
と、俺の名を、…病院内であることを考慮してか。
それでも、小声で叫ぶように、口にした。

藤丸の、そんな反応は、最初から予想済みだった俺は、わざと話を軽くするように、淡々と話の先を進めた。

「ただそれが、別に、殺されなきゃならないほどの罪じゃないってだけで。
けどそれが、大きかろうが、小さかろうが、嘘をついたことがない人間がいないのと同じように。
誰だって、一つや二つ、罪を犯して生きている」
「…でもっ! 」
「そう、”でも”それを裁くのは、…裁いていいのは、テロリスト達じゃない」


俺が言っていることは、哀しいけれど、正論だと、自分でも思う。


俺たちだってつい先日、折原マヤを調べるために、彼女に嘘をついた。

結果論として、彼女がテロリスト側の人間だったからこそ、俺たちのしたことが罪に問われることはなかったが。
もし仮に、彼女がシロだった、もしくは、あの時点で彼女がテロリスト側の人間であることの確証をつかめなければ、俺たちのしようとしたことは、生徒が先生についた、つまらない嘘でしたなんて、言い訳できるレベルのことではすでになく。
それどころか、俺が折原マヤを連れ出している間に、藤丸のしたことは、住居不法侵入どころの話じゃないことになる。

例えそれが、他人を貶めるためや、自己の利益のためだけに行ったことではなかったとしても、…だ。

そうやって、人はいくつもの、小さな罪を犯して生きている。


もっといえば。
今朝、俺の食べたベーコンエッグですら、何かの命を喰らって、自分という人間はここに存在しているのだから。
ならば人は、生きているだけで、すでに罪深いものだと。
無心論者の俺ですら、そう思う。


だから、人に迷惑をかけずに、何も奪わず、何も惜しまず。
ただひたすらに、清廉潔白に生きている人間など、…この世界に、いないに等しい。

ゆえに、藤丸言う、”罪もない人”など、この世界には、いない。
本当に、本心からそう思っているからこそ、俺はそういった。
けれど、その正論に、藤丸は、”でも”と、悲痛な声で異を唱え、必死になってかぶりを振った。

そう返されることを確証していた俺は、落ち着いて、その先の言葉を受け取って言った。
その言葉に、とたん、ほっとしたような顔をした藤丸は、きゅっと唇を引き結んで、俺を上目使いに見ていた。

そんな藤丸の視線を外さないようにして、俺は、言葉の続きを言った。


「だから、あいつらのやろうとしていることは、間違っている」

慎重に言葉を重ねる俺に、藤丸は、こくりと、細い首を上下に動かして。
ゆっくりとうなずいて見せた。
そんな彼に、同じように小さくうなずき返した俺は、ひとつ息を吸ってから、唇を明瞭に動かした。


「藤丸。
だから、お前の言っていることは正しい。
けど、…遥ちゃんが言ったこともまた、…正しいと、俺は思う」

言葉少なに語られた、俺の言わんとしていることに。

けれど、すでにその真意に気づいている藤丸は、困ったように目を伏せ。
そして、ゆっくりとまぶたを開くと、次に言うべき言葉を捜すように、視線を左右にさ迷わせた。

しかし、昔から、俺の前では嘘が下手だった藤丸は。
確信を持って話している俺を、適当に煙に巻くような。
そんな都合のいい言葉を、すぐに見つけることができなかったようで、力なく、
「それは…」
とだけ、口にして、黙ってしまった。

ただ、自分がだんまりを続けても、そんなことくらいでは、俺が引かないことを知っている藤丸は。
何も言おうとはしなかったけれど。
けど、あえて、何かを反論しようともせず。

ただ黙って、観念したように、俺を見ていた。

こちらの声が、その心に届いていない、頑なな態度を見せていた、話し始めた時の藤丸と違って。
彼の意識が、ちゃんと俺の方を向いていることを確認してから、俺は話の最後を締めくくった。

藤丸の心に、まっすぐに、…その言葉たちを届けるために。


「藤丸だって、本当は、遥ちゃんと同じように、思ってるはずだろ?
確かに。
結果だけに目を向けるのであれば、宝生小百合が、本当にただ悪い人間だったのか、あるいは、そうじゃなかったのか。
その判断は、難しいのかもしれない。
けど、宝生小百合が、遥ちゃんやお前にしたことのすべてが、狂ったテロリストのやるべきことだったとは、決して言えないんじゃないのか?
俺は、お前たちほど、彼女と直接接触していたわけではないから、コレはただの推論でしかないのかもしれない。
でも、藤丸や、遥ちゃんの前にいた、サードアイの宝生小百合が、テロリストの本性を偽った、偽者だったとしても。
だとしても、サードアイの宝生小百合が、藤丸や遥ちゃんのためにしたことの全てが嘘だったとは、…俺は、言い切れないと思う。
だったら、遥ちゃんと同じように、藤丸だって、宝生小百合の、…彼女の死を、ちゃんと哀しんでも、…いいんじゃないのか? 」

俺が、言葉の一つ一つを、幼い子に言い聞かせるように吐き出していく様を、じっと見ていた藤丸は。
けれど、緩く首を左右に振って、それを否定して見せた。
俺は、間髪入れずに、藤丸に問いかけた。

「なんで? 」
「迷ったら、…駄目だから」

蚊の鳴くような声が、藤丸の唇から零れ落ちた。

「迷ったら駄目って? 」

俺は、鸚鵡返しにそういった。

言われた藤丸は、覚悟を決めたように顔を上げて、ぽつり、ぽつりと、言葉を重ねた。

「…迷ったら。
迷ったら、多分、…俺は、負ける。
だから、俺は、迷えない。
迷っちゃ、いけないんだと思う」


本音を言えば、”迷っちゃいけない”…ことは、ないと思う。

人は迷う生き物だし、…突きつけられているのは、実際に、生きるか死ぬかの問題で、……そして藤丸は、ハッカーとして、彼に秘められた力を除けば、まだ、ごくごく普通の高校生なのだから。

だから、藤丸が迷ってはいけないことはないと、俺は言い切れる。

けど、藤丸が迷ったら、困る人間は、多いと思う。

藤丸が迷い、その結果彼が負けるのだとすれば。
彼が大切に思う遥や、その立場が今や追われる側におかれてしまっている彼の父や、……今現在、有形、無形の形で、藤丸の存在に守られているであろう数多の人間が、テロリストたちの脅威の前で、危険に曝されることになるのは、明白だった。

そして、藤丸が迷えば、サードアイの人間も、藤丸を使えなくなる。
藤丸が、ハッカーとしての類まれな力を備えていたとしても。
迷う人間は、使えない。

使えないと判断されれば、二度と自分が守る側にはいけなくなることを、藤丸は知っている。

たとえ自分が、サードアイの中枢にいた高木竜之介の息子で、テロリストたちを凌ぐ、ハッカーとしての実力があったとしても。
迷う人間を、サードアイは使わない。
結果、使えない人間は、切り捨てられる。
いや、切り捨ててくれるだけなら、まだましな方で。
恐らく、藤丸の力は危険視されて、軟禁状態程度ですめば、御の字。
もしかすると、扱いきれない力は、闇から闇へ、葬り去られる危険性すら、孕んでいる。

そういう冷酷な考えでなければ、国は守れないと。
自分の父親が、そこに籍を置いていたからこそ。
彼らがそう考えていることを、藤丸は知っている。

知っているからこそ。
自分は、負けられない。
だから、迷えないという結論に、達したのだろう。

でも、本当に哀しいときに哀しいと。
それすら口にできないことは、…あんまりだとも、俺は思う。

人の死を、当たり前にできない藤丸だからこそ、誰かを、何かを、…護るために闘えるのだとすれば。
泣きたいときに泣けないことは、……彼の心をすり減らし。
善と悪の狭間で揺れ動く針が、どちらに傾くのかが、藤丸の良心にのみかかっている今の状態で、削られた心が、いつか折れるときが来るとすれば。
そのときにこそ、藤丸が、テロリストに成りえる可能性を、孕んでいる。

それはきっと、藤丸が望む彼ではないはずだった。

だからこそ、俺のするべきことは…。

 

「なるほどねぇ。
でも、自分のそばにいた人が、…その人が、死んだ夜くらいは。
その人の死を悼むくらいのことをしたって、罰は当たらないと、俺は思うけどなぁ」

簡易ソファの、薄いウレタンに覆われた、壁紙の落ち着いたトーンをなぞるような、同系色のビニル部分をなぞる様に、そこで指先を二往復させて。
そのまま両手をそこについて、待合室の天井で、消されたままの蛍光灯を見上げた俺は、上を向いたまま、ふわふわとした声で、そこまで言って。
それにつられるように、ゆるゆると、俺の視線の先を同じように見ていた藤丸が、顔を上げたのを確認してから。
首をくるんと藤丸のほうに向け、彼と視線を合わせて、一音づつをかんで聞かせるように、言葉を放った。


「宝生小百合が、テロリストの一味だったことは、変え様のない事実だ。
けど、目に見えるものだけが真実とは、限らない。
少なくとも彼女は、遥ちゃんや朝田を、…そして、加納生馬や藤丸、…お前を、殺さなかった。
いや、殺せなかった。
俺にとっては、それが事実で、それが真実だ」
「…………」
「だから俺は、宝生小百合を、ただの狂ったテロリストとは、…思えない」


そう言い切った俺を、穴が開くほどじっと見ていた藤丸は。
揺るぎない視線で見つめ返す俺に、くしゃりと表情を崩した。

それから、溜めていた息を、3つ数える間分くらい、長く吐き出して、すんとひとつ、鼻をすすると、ぎゅっと眉を寄せ、唇を噛み締めた。

その些細な動きの一つ一つを、責めることなく見守る俺の前で。
藤丸の瞳から、つっと、一筋の透明な涙が落ち、静かにその頬を伝った。


藤丸が、長く苦しかった一日の最後に。
ようやく、泣くことのできた瞬間だった。

 

to be continued....

 

[ あとがき ]

相変わらずの、成瀬の長文にお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
っていっても、まだ終わってませんけど<死

いや、分量的には、今回のが前、中編くらいで、残りが後編位の量の割合なのですが、なんせ、きるところが見つからなくて、すみません。
でも、全部を一気に上げたら、あまりにも長いんで、ここできりました。

この続きの後編は、近日中にアップします。

ちなみに、ドラマ的に言うと、5話のラスト、病院であおいちゃんに平手打ちされたその後に、”あったかもしれない”会話を勝手に想像して書いています。

というのも、原作マンガのほうでは、遥ちゃんに、宝生さんは、本当に悪い人だったの?と聞かれて、そうじゃないって答えてるんですけど、ドラマではあえて、そうだって答えてて。
でも、藤丸君は、全然遥ちゃんの目を見て答えてないし。
そういう前に、何度も視線をさまよわせて、答えを逡巡してからいっているところの、そこにこめられた藤丸君の想いを、文字にしてみたかっただけの、成瀬の自己満足で、申し訳ありません。

あと、マンガでは出番が多いのに、ドラマ版では出番が大幅にカットされてる、…と、成瀬が勝手に思ってるだけかもしれない健ん、…ってか、音弥に、出張ってほしかっただけなのかもしれませんが(待てコラ) 

でも、書いてる成瀬は楽しかったんで、お一人様でも、面白かったと言っていただけたら、成瀬は泣いて喜びます。
つたない作ではございますが、ひとことでも、ご感想等いただけましたら幸いです。
ただし、成瀬はビビリなんで、このエントリにコメントは、受付承認後しか、UPされない設定されております。
その点をご了承いただき、また非公開希望の際は、コメントにその旨ご明記いただけましたら、成瀬の心にだけ、そっとしまっておきます。
また、もし、一言でもご感想をいただけるのであれば、サイドバーでご案内しております、成瀬のWEBサイト、「出せない手紙」の私書箱のコーナーから、メールフォームを使ってお送りいただけますよう、お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。

<追伸>
相変わらず、誤字脱字はけーんだったので、ちょっとだけ直しました。
でも、まだあるかも?
ってか、多分、ある(ヲイ)

<追伸 その2>
ちょこちょこご感想いただいてる皆様ありがとうございます。
お返事は100%でさせていただいておりますが、今しばらくお待ちください。
また、pass請求等のweb管理の対応も週末までにはいたしますので、少々お待ちいただけますよう、よろしくお願いいたします。


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