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終戦の日。/天使たちの探偵~SideStory [ぶいろく系]

終戦の日から、今年は10日ほど遅れてしまいました。。。
申し訳ございません。 

毎年、この時期にはこの小説をここで掲載させていただいておりますが、成瀬は、戦争を知らない子供です。

しかし、成瀬父は、終戦の年に生まれた子供です。
っていうか、終戦の日から数えて、10日も経たずに生まれた子です。

だから、父の話すギブミーチョコレートは、まぢで、西宮浜のとこに駐留していた米兵さんとの間で交わされたギブミーチョコレートで。
六甲付近の山幹が、あんなに広い道路なのは、実際あそこを滑走路代わりにして、米機が降りてきたこともあるからだったりと。
今では、嘘のような、本当の話を、折に触れ父が語ってくれたことが、今日という日には思い出されます。

といっても、実際父は戦争経験者ではなく、その子供である私も、もっと戦争は遠いものでしかないのかもしれません。 

ただ。

戦争を知らない人間に、本当の意味で戦争を知ることは出来ないと思いますが、知ろうとする努力が、同じ過ちを繰り返さないため、この国に生まれた人間としての、唯一の償いと考えるので、成瀬は毎年この時期だけでも、きちんと、このことと向き合う時間を作ろうと思っております。

っていうか、子供のときから、そうだったので、この時期必ずテレビとかで流れてるあれも、あながち無駄ではないと思うのです。
今年は、小栗くんや向井くん目当てぢゃん?って突っ込まれそうですが、帰国(正しい漢字がだせずにすみません)を拝見しました。
あれだって、もちろんイケメン俳優鑑賞目当てだったとしても、絶対に、無駄ではないと思うのです。

忘れないこと、考えること。
そして、今、自分の考えを、自分の気持ちで、選択することの出来る立場の自分たちが、いかに幸せなことなのかを胸に、二度と戦争という名の悲劇が繰り返されないことを、切に祈ります。

再々録なんで、新作でなくて、大変恐縮ですが。。。
そして、初見の皆様へは、このブログの本家「出せない手紙」サイト内掲載の小説「天使たちの探偵」シリーズから、そのままの設定で書いておりますので、どこぞの方々と、同じような名前の人が出ていても、それはあくまで、フィクションでございます(待てコラ(苦笑))

ちなみに、軍用施設になりかわっていた甲子園のグラウンドには、当時、もう二度と、そこで野球なんかできるわけないだろうと思えるほどの焼夷弾が、突き刺さっていたそうですが、今そこで、今年も変わらず夏の甲子園が行われていた奇跡に、感謝です。
そして、あの大きな甲子園が、シェルターのように、人々の命を爆雷から守ったこともまた、この地に住む人間が知っておかなければならない事実だと、思っております。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーここから下。

「天使たちの探偵」~SIDE STORY~

= 逝く夏 =

「なんだかなぁ~」

 

液晶画面の向こうで、試合を止めた審判の動きに促されるように、カメラは引きのポジションをとり、にわかに試合が止められた理由が映し出された、球場奥の電光掲示板をすっと撮してから、得点ボードの上部に設置されたアナログ時計で、カメラは止まった。
時計の針が指す時刻は、ちょうど、正午少し前だった。

 

いや、あんたのその台詞の方が、”なんだかなぁ~”って言いたいくらい、聞かされた方の気が滅入りそうな、力の抜けた言葉を発した坂本に、自分の机でノートパソコンを広げていた長野が、上目使いに彼に向かって非難がましい目を向けたのだが。
いかんせん、普段より人様からのどんな視線であろうとも、それをもろともしない人物である坂本は、両膝に肘をついて顎を支えながら、ため息を一つついた。

ただし、誰がどう見ても。
大きなため息をつきたいのはこの場合、明らかに、長野の方である。

そもそも、長野探偵事務所の室内に設置された、来客用のソファセットであることを正しく理解しているのか、いないのか。
まかり間違っても、探偵を依頼するつもりのない人間4人が、そこに腰を下ろして、あまつさえ、雁首そろえてテレビの画面を眺めている光景に、怒る以前に、半ばあきれるのを通り越して、あきらめの境地で、そんな彼らを黙って見ていた長野だったが。
さすがに、人の仕事のじゃまをせず、静かにテレビを見ている分には、まだ許しもするが、そんな、気の抜けた台詞を聞かされ、ついでに、ため息までも落とされたのでは、たまったもんじゃない。

大体、暇を持て余している、夏休み中の学生二人、・・・である、准一と健だけならいざ知らず。
人の仕事中に、その仕事場である探偵事務所に、用もないどころか、自分たちだって、仕事中であるはずの人間二人、・・・である、坂本と井ノ原までもが集まってきて、しかも、仕事をしている人間が目の前にいることを知っていて、なおかつ、夏の全国高校野球大会を、テレビ鑑賞しているのは、それはいかに? と、聞きたくなる所行である。

いや、ただ単に、夏期休暇で暇な学生二人は、長野の事務所の雑用アルバイト(といっても、無給でいいそうだが)にやってきて、仕事中であるはずの二人は、昼休みのコンビニ弁当を、暑くて狭い車内で掻き込むのがイヤだったからという理由だけで、長野の事務所を食堂代わりに使っているのである。
で、そのついでに、仕事中の長野そっちのけで、4人で昼ご飯のコンビニ弁当をつつきながら、野球観戦まで始めてしまっただけのことなのではあるが。
普通は、しないだろう?
という突っ込みは、誰一人として、入れなかったようで、現在に至っている。

テレビの画面には、ちょうど高校球児達が、その動きを止め、スタンドを埋め尽くす両校の応援団も、手にした楽器類を椅子に置き、立ち上がろうとしているシーンが映し出されていた。

坂本の”なんだかなぁ~”は、その動きに対しての、感想だったらしい。

「やっぱり? 僕もさぁ、高校野球好きだから、毎年見てるけど、なんか違和感ありありなんだよね~、これって」

暑いときは食欲がわかないらしい健は、坂本の向えのソファーに腰を下ろし、比較的するっと入るとのたまった冷やし中華の、水色のプラスチック容器を片手に、箸で錦糸卵を捕まえながら、彼の意見に賛同するように、そういった。
が、それとは対照的に、准一は、画面の向こうの人たちと同じように、手にした箸を弁当の縁にきちんと置いてから、試合中だった選手や甲子園球場に集まる人々が今からやろうとしていることに倣おうとするつもりだったらしく、坂本と健の意見に、驚いたように、目を丸くして顔を上げた。
しかし、それに気づかず画面の向こうに目をやったままの二人に苦笑した井ノ原は、そんな准一に助け船を出すように、口を開いた。

「まあねぇ、毎年どんな試合状況だろうが、8月15日だけは、正午になったら突然コレ、っていうのも、どうなんだろう? って気は、しないでもないけど。
けど、こうでもしないと、最近は、今日が何の日か、忘れてる人多いしね。
ホントは、忘れちゃいけないことなんだから、いいんじゃないの?
多少、違和感ありありでも」

そんな井ノ原の意見に、「そうかぁ~? 」とでもいいたそうな坂本と、実際、
「でもさ、コレやってる人みんなが、ホントに心から気持ちを込めてやってるとは、僕は到底思えないけどねぇ~」
なんて、辛辣な意見を口にした健を見て、准一は、口を開いた。

「終戦の日に、黙祷を捧げることが、そないに違和感感じることなんか? 」

毎年、夏の全国高校野球大会が行われる甲子園では、終戦の8月15日の正午に、必ず試合を中断し、全員起立して、半旗の掲げられたスタンドを見つめながら、試合開始とは違った意味合いのサイレンとともに、誰もが黙祷を捧げる。
65年前に、その命を、戦争という悲劇で失った人々の魂が、僅かであろうとも、どうか安らかであれと、その思いを胸に、一分間の黙祷を、捧げる。

それは、生中継される高校野球の不文律でも、あった。

ソファーセットのテーブルの上に、コトンと手にした弁当箱を置いてから、うつむき加減で、准一は、言葉を続けた。

「僕かて、終戦の日の正午に、甲子園で黙祷を捧げることが、戦争で亡くなった人みんなの救いになるなんて思わへんし、その黙祷を捧げる人みんなが、その意味を全部理解しとうなんて、思てへんよ。
けど、意味があるとかないとか、そういう以前に、なにかやれることをやろうとする気持ちが、一番大事なんやと思う。
その球場に集まる人間全部やなくても、そのテレビを見てる人間全部やなくても、その中の何人かでも、ほんまに心からの黙祷を捧げてる人間はいてるはずやねんから、それを否定するんは、間違うてると、・・・僕は思う」

常は、さほど饒舌ではない准一の、静かな声で紡がれる、至極真っ当な意見を前に、それを聞かされた3人は、瞬時に押し黙った。
とたん、微妙な空気が流れる。

「あ、や、・・・別に否定してるってわけじゃねぇけど、・・・な」
「そうそう。いや、なんか、さっきまでふつーに試合してたのに、暗黙の了解みたいに、突然当たり前のように始まるからさ、ちょっと異様だなぁ~っていうか、そんな気がしただけで。
それが悪いっていってるわけじゃないし」
「そうだよ、岡田。
コレって、なんか恒例行事みたいになっちゃってるから、ちょっと違和感感じるけど、・・・だからって、とりあえずやっておけばいいみたいに、ないがしろにされてるわけでもないからさ、ね」

その場を取り繕うように、矢継ぎ早なフォローを必死になって入れる3人に、言った准一の方が、あわてて顔の前で、両手を振った。

「や、あの、・・・僕も、なんかきつい言い方して、ごめんなさい。
そんなつもりあれへんかってんけど、多分僕は、大阪にいてたから、毎年夏は、コレが当たり前やって、・・・当たり前や思ててんけど、けど、なんかそれ否定された気がして、つい、あんな言い方してしもて。
ホンマ、ごめんなさい」

そんな、座っていたソファーから、腰を浮かさんばかりの准一の勢いに、謝られた3人も、のんびり座っていることができず、いやいや、俺達の方こそ。
いや、そんなそんな。
と、どこまで、お互い腰が低いねんってつっこみたくなるくらいの4人の謝罪合戦は、見ていて一層、・・・・・・奇妙だった。

「もう、それくらいにしたら? 」

ソファから一人離れた椅子に腰を下ろしていた長野の声に、全員が、そちらを向いた。

「3人が言いたいことは、わかるよ。
形だけの黙祷なんて、ない方がマシって言いたいんでしょ?
テレビの中継が入ってるだけに、余計パフォーマンスっぽく感じるのも、致し方ないことだと思うし。
実際球場で、黙祷の間も、携帯片手にメール打ってる子だっていたし。
でも、そうじゃない人間の方が多いんだから、そんな穿った見方をしなくても、いいんじゃないかな?
それって、真摯に、それと向き合ってる人たちに対して、すごく失礼だよ」

長野の簡潔な言葉に、3人はぎこちなくうなずくしかなかった。
それを見てから、長野は准一に視線を向けた。

「准一の言いたいことも、わかるよ。
っていうか、そういってくれる人間が一人でもいる限り、この瞬間が無駄じゃないって俺も思うし、・・・できれば、一人でも多くの人間が、そう思っていて欲しいって、心底思う。
ただ、祈りを捧げる行為は、誰かに強制されてやるもんじゃないし、まして、必ず、この日のこの時間にしなければいけない、ってものでもない。
だから、その行為の是否を問うのは、違うんじゃないかな?
黙祷を捧げたいと思う人は、そうすればいいし、そうじゃない人は、しなければいいだけのことでしょ?
人に押しつけたり、押しつけられたりしてやることじゃないよ。
・・・亡くなった人を思いやれる気持ちを持った人間が、生きてる人間を思いやれないなんてことは、ないはずだからね」

小首を傾げるようにして言った長野の顔をじっと見ていた准一は、もう一度だけ、「ごめんなさい」と、謝罪の言葉を口にした。
言われた長野は、首を左右に振って、「俺に謝る必要はないよ」とだけ、答えた。

そして、座っていた椅子から立ち上がると、ふわっと笑って、4人に言った。

「今のは、お互いの言葉に、ちょっと配慮が足りなかっただけ。
どっちも正しかったけど、どっちも少しだけ、間違ってた。
その結果として、どっちもが傷ついた。
・・・戦争も、そうなのかもね。
ただ、今みたいに、すぐにそれに気づけたら、あんなに多くの犠牲を出さずにすんだんだろうけど。
それがとても、残念だね」

どちらも正しくて、どちらも少しだけ間違えただけでも、結局はどちらもが傷つく。
たしかに、戦争というモノも、その延長線上にあったのかもしれない。

誰もが、負けるとわかっていて、戦争を始めたわけではない。
自国を焼き尽くすために、多くの人間の命を失わせるために、戦争をしようとしたわけではない。
ただ、強くなりたい。
列国に脅かされない、そんな強い国になりたい。
そう思ったことが、それほど罪なことだったのか?
と、問われれば、そのすべてを否定することは、難しいことなのかもしれない。

それでも、失われたものは、大きすぎたけれども。

椅子からたった長野は、ゆっくりと歩を進めて、自分の事務机の前に回ってきた。
そして、ソファーセットでテレビを取り囲むように座っていた4人を見回してから、すっと右手の人差し指で画面を指していった。

「ほら、はじまるよ。
やる、やらないは、自分で決めれば、いいけどね」

その声に、ぐるんと顔の向きを変えて、長野が指さしたテレビの画面を見つめると、ちょうど12時を指した時計が映し出され、次の瞬間、「ウゥーン」というサイレンが、この一時だけ、音のやんだ甲子園球場に、こだました。

一分間の黙祷。

そこにどんな意味があるのか。
意味なんて、ないのかもしれない。
けど、意味はあると、信じていたい。

そう思う人間が、今、心からの黙祷を捧げる。
失われた命の平穏と、これから先の平和を祈る。

目配せ一つなかったのに。
それでも、まるで図ったかのように、怖いくらい同じタイミングで、音もなくソファから立ち上がった4人の姿に、ふっと表情をゆるめた長野は、ゆっくりとその瞳を閉じて、黙祷を捧げた。
そして、立ち上がった4人も、それぞれの思いを胸に、同じように、目を閉じて、頭を垂れた。

 

そこだけ、時間が切り取られたような静寂が、一瞬にして戻ったことを伝える、テレビからの音声に、その場で黙祷を捧げていた5人が、目を開いて顔を上げた。

お互いに顔を見合わせた4人は、誰からともなく、照れたように笑いあって、ソファに座り直し、中断されていた昼食に戻ろうとした。

が、同じように座っていた椅子に戻りかけた長野だけが、肩越しに4人を振り返り、言った。

「でも、ま、俺も、なんだかなぁ~って感じだし、違和感ありありって感じが、ものすごいするんだけどね」 

その長野の言葉に、4人の「えっ? 」って、驚愕の声が、重なった。

だってそれは、先ほど長野が語ったことをすべて、根底から覆す言葉に、他ならなかったから。
だから、誰もが、驚きのあまり、再び手にした箸を、取り落としそうになったのである。

けれども、そんな4人の様子に目もくれない長野は、すとんと自分の椅子に座り直すと、呆れたように4人を眺めていった。

「だって、人の仕事中に、人の仕事場で、暢気にお昼ご飯食べてるってのは、なんだかなぁ~って感じだし。
男4人が顔つきあせて、携帯ワンセグの小さい画面で、高校野球を観戦してるってのも、違和感ありありだよね、どうみても」

それだけ言った長野は、一つ、これ見よがしに大きく息を吐き出すと、開いていたノートパソコンに視線を落とし、仕事を再開してしまった。

言われた四人はというと、黙祷とは別の意味で、もう一度頭を垂れることしばし。

次の瞬間には、のどを詰まらせながら、大急ぎで残りのご飯を各々の胃に収め、注目のカードだった試合の続きを見るのも忘れて、いそいそと携帯の画面を閉じたことは、言うまでもなかった。

長野探偵事務所の窓の外には、逝く夏の日差しが照りつけ、閉じられた画面の向こうでは、今し方、黙祷を捧げた高校球児達が、スポーツマンシップに則った戦いを、再開していた。

 

=了=

 

<あとがき? >

ギャグなんだか、マジなんだか、よくわからない作品になってしまいましたが(ヲイ)自分で言うなってつっこんどきます。
ちなみに、成瀬は神戸っ子なんで、甲子園の黙祷は、年中行事です(はい?)

いえ、本当に、成瀬も意味があるかないかじゃなく、こういう時間を持つことが大事なんだと、思っています。
普段考えないことを、きちんと考える時間を持つことが、今の自分にできることだと、思っていますので。

平和への祈りが、絶えることのないように。


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